東京銀座クリニック
 
ホーム 院長紹介 診察のご案内 診療方針 書籍案内 お問い合わせ


早期の膵臓がんは手術によって根治することは可能です。しかし、膵臓がんの場合は、検診で見つかったような場合でも、すでに転移していて手術ができない場合も多く見られます。たとえ手術できても、再発する率が高いのが膵臓がんの特徴です
このような進行がんの場合、抗がん剤治療が主体になりますが、抗がん剤でがんを消滅させることは困難であり、数ヶ月の延命効果が期待できる程度です。最近は、分子標的薬のような新薬も開発され、一つの方法で効果が無くても、第2、第3の抗がん剤治療が用意されており、このように複数の抗がん剤治療を行うことによって治療効果があがりつつあります。

膵臓がんによる死から免れるためには、根治手術後も積極的に再発予防に有効な方法を実践することが大切です。抗がん剤治療の場合も、副作用の軽減や効果増強に有効な補完・代替医療は多くあります
進行がんや末期がんの状況でも、生活の質(QOL)の改善や延命に有効な代替医療は多くあります
標準治療の効果が出なくなって緩和治療に移行せざるを得ない場合でも、効果が期待できる代替医療を組み合わせることによって、延命することは可能です

@ 抗がん漢方薬
膵臓がんに対する抗腫瘍作用が経験的に知られている生薬として半枝蓮、白花蛇舌草、竜葵、夏枯草、莪朮、三稜などがあります。これらの抗がん生薬に、病状や体力に応じて滋養強壮薬や免疫力を高める生薬などを組み合せた漢方薬を服用すると、がん細胞の増殖を抑えると同時に、がんに対する抵抗力や治癒力を高めることができます。
漢方治療についてはこちらへ

A 血管新生阻害剤

1)血管新生阻害作用や悪液質改善効果を有するサリドマイドは単独では肺癌に対して効果は低いのですが、COX-2阻害剤のセレブレックスやアルテミシニン誘導体などと併用することによって癌の進展を抑制できる可能性が報告されています。
サリドマイドについてはこちらへ

2)膵臓がんはシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の活性が高いことが多いので、COX-2阻害剤のセレコックス(一般名:celecoxib)を併用することは有用です。セレコックスには、がん細胞の抗がん剤感受性を高め、抗癌剤の副作用を軽減する効果も報告されています。
セレコックスについてはこちらへ

3)マラリアの特効薬として使用されているアルテミシニン誘導体製剤は、多くの悪性腫瘍に対して殺細胞作用を示すことが報告されており、サリドマイドやセレブレックスとの相乗効果が指摘されています。血管新生阻害作用も報告されています。
膵臓がんに対してアルテスネイトが抗がん作用を有することが報告されています。(詳しくはこちらへ
アルテスネイトについてはこちらへ

B 分化誘導療法剤

ビタミンD3とレチノイン酸のイソトレチノインと高脂血症治療薬のフェノフィブラートは核内受容体を介して遺伝子転写に作用して、がん細胞の増殖抑制や分化誘導やアポトーシス誘導などの抗腫瘍活性を示します。
ビタミンD3についてはこちらへ

C エネルギー代謝阻害

1)がん細胞のグルコース代謝の解糖系を阻害する2-デオキシ-D-グルコースはグルコースの取込みが多いがん細胞に取り込まれて解糖系を阻害します。
2-デオキシ-D-グルコースについてはこちらへ

2)ミトコンドリアの酸化的リン酸化を活性化するジクロロ酢酸ナトリウムはがん細胞の酸化ストレスを高めてがん細胞を死滅させます。
ジクロロ酢酸ナトリウムについてはこちらへ

D 増殖シグナル伝達阻害

がん細胞の増殖シグナル伝達系で最も重要なmTORC1(哺乳類ラパマイシン標的蛋白質複合体1)を阻害するラパマイシンメトホルミンはがん細胞の増殖を阻害し、細胞死を誘導します。
ラパマイシンについてはこちらへ
メトホルミンについてはこちらへ

その他:

1)体内のケトン体を増やすケトン食を増やすとがん細胞の増殖を抑制できます。中鎖脂肪酸中性脂肪(MCTオイル)を多く摂取するとケトン体の産生を増やすことができます。
2)内因性オピオイドの一種のメチオニン・エンケファリン(オピオイド増殖因子)はがん細胞の増殖を阻害します。これは1週間に1〜2回点滴で投与します。
3)メラトニンは免疫力や抗酸化力を高め、抗がん剤や放射線治療の副作用を軽減し、抗腫瘍効果を高めます。抗がん剤や放射線治療、緩和医療と併用して延命効果が証明されています。
4)ジインドリルメタン製剤のDIM-Proはがん細胞を死滅させる作用があります。
ブロッコリーなどのアブラナ科植物に含まれるジインドリルメタンが、膵臓がんの抗がん剤耐性を弱め、抗がん剤治療の効き目を高めることが報告されています。
ジインドリルメタンについてはこちらへ
5)低用量のナルトレキソンを使う低用量ナルトレキソン療法は、内因性オピオイドの産生を高めて体の治癒力を高め、がん細胞の増殖を抑制します。
低用量のナルトレキソン内服とアルファリポ酸の静脈注射によって肝臓転移した進行膵臓がんが長期生存した症例が報告されています。
6)ω3系不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)のサプリメントは、COX-2阻害剤の抗腫瘍効果を増強します。
7)アルデヒド脱水素酵素を阻害するジスルフィラム、ヘッジホッグ・シグナル伝達系を阻害するメベンダゾールは膵臓がんの抗がん剤感受性を高めます。(詳しくはこちらへ


図)がんの進行状況や、体力や免疫力の状態に応じて、組み合わせを考えます。
正常細胞に対する毒性が少なく、抗がん剤のような副作用が少ないので、QOL(生活の質)を悪化させないで、がんの進行を抑えることが可能です。うまく効果が噛み合うと、がん組織の縮小も可能です。

1ヶ月分の費用:抗がん漢方薬(30,000円前後)、サリドマイド(45,000円)、セレコックス(18,000円)、アルテスネイト(12,000円)、ビタミンD3(6,300円)、レチノイン酸(6,000円)、フェノフィブラート(6,000円)、2-デオキシ-D-グルコース(25,000円)、ジクロロ酢酸ナトリウム(12,000円)、ラパマイシン(15,000円)、メトホルミン(6,000円)、オピオイド増殖因子点滴(120,000円)、メラトニン(5,000円)、ジインドリルメタン(9,000円)、低用量ナルトレキソン療法(12,000円)

● サリドマイド+セレブレックス+アルテミシニン誘導体の相乗効果
サリドマイドのような血管新生阻害剤を使用すると腫瘍は低酸素状態になるため、hypoxia-inducible factor-1 alpha (HIF-1α、低酸素誘導性因子1α)という転写因子が活性化されて、低酸素の腫瘍細胞に酸素を供給するために血管新生を促進しようとします。
がん細胞はトランスフェリン・レセプターの発現が強く鉄を多く蓄積していますが、HIF-1αにはトランスフェリン・レセプターの発現を高める作用もあるため、低酸素の腫瘍細胞はさらに鉄が蓄積しやすい状況にあります。
アルテミシニンは鉄を含んだ細胞に対して選択的に毒性を発揮するので、鉄の補充とアルテミシンの投与を合わせた治療法に、血管新生阻害剤を用いた治療を組み合わせると、さらに抗腫瘍効果を高めることができます。(Med Hypotheses. 61(4):509-11.2003 )
また、アルテミシニン誘導体自身に血管新生阻害作用があることが報告されています。ヌードマウスに移植したヒト卵巣癌細胞の実験で、アルテミシニンは血管新生と癌組織の増殖を抑制し、副作用は認めませんでした。In vitroの実験で、アルテミシニンは0.5-50 μMの濃度で用量依存性に血管新生を抑制しました。(Pharmacology71(1):1-9.2004 )

● AMPKの活性化やPI3K/Atk/mTOR経路の阻害を目標にしたがん治療

【AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)とは】

AMP活性化プロテインキナーゼ(AMP-activated protein kinase:AMPK)は人から酵母まで真核細胞に高度に保存されているセリン・スレオニンキナーゼ(セリン・スレオニンリン酸化酵素)の一種で、細胞内のエネルギーのセンサーとして重要な役割を担っています。
全ての真核生物は、細胞が活動するエネルギーとしてアデノシン三リン酸(Adenosine Triphosphate :ATP)というヌクレオチドを利用しています。ATPがエネルギーとして使用されるとADP(Adenosine Diphosphate:アデノシン-2-リン酸)とAMP(Adenosine Monophosphate:アデノシン-1-リン酸)が増えます。すなわち、ATP → ADP + リン酸 → AMP+2リン酸というふうに分解され、リン酸を放出する過程でエネルギーが産生されます。
AMPKはこのAMPで活性化されるタンパクリン酸化酵素で、低グルコース、低酸素、虚血、熱ショックのような細胞内 ATP 供給が枯渇する状況において、AMPの増加に反応して活性化されます。
AMPKは細胞内エネルギー(ATP)減少を感知して活性化し、異化の亢進(ATP産生の促進)と同化の抑制(ATP消費の抑制)を誘導し、ATPのレベルを回復させる効果があります。すなわち、AMPKが活性化すると、糖や脂肪や蛋白質の合成は抑制され、一方、糖や脂肪や蛋白質の分解(異化)が亢進してATPが産生されます。

がんの危険因子であるメタボリック症候群ではAMPKの活性が低下しています。
がん細胞ではAMPKの活性が抑制されており、AMPKを活性化するとがん細胞の増殖を抑制できることが報告され、AMPKはがんの予防や治療のターゲットとして有望視されています。
AMPKの活性化ががん細胞の増殖を抑制する効果があることは、培養がん細胞や移植腫瘍を使った動物実験など多くの基礎研究で明らかになっています。AMPKは細胞増殖の制御に関連する幾つかのたんぱく質の活性に影響します。次のようなメカニズムが報告されています。

1)AMPKはがん抑制遺伝子のp53を活性化して、がん細胞の増殖を抑制する効果があります
2)AMPKは脂肪酸やコレステロールの合成に必要なacetyl-CoA carboxylase (ACC)とHMG-CoA還元酵素(3-hydroxy-3-methylglutaryl-CoA reductase)の活性を阻害します。ACCの阻害によって脂肪酸の合成が阻害されるとがん細胞の増殖が抑制されます。
HMG-CoA還元酵素は、コレステロールやイソプレノイドを合成するメバロン酸経路の律速酵素の一つで、メバロン酸経路が阻害されると、がん細胞の増殖が抑えられることが知られています。
3)AMPKは嫌気性解糖系を阻害します。がん細胞では、嫌気性解糖系が亢進しており、ワールブルグ効果として知られています。がん細胞の嫌気性解糖系を阻害することはがん細胞の増殖抑制に有効です。
4)AMPKはmTOR(mammalian target of rapamycin)経路を阻害して蛋白質の合成を抑制し、がん細胞の増殖や血管新生を阻害します
mTOR(mammalian target of rapamycin)はラパマイシンの標的分子として同定されたセリン・スレオニンキナーゼで、細胞の分裂や生存などの調節に中心的な役割を果たすと考えられています。mTORの活性を阻害すると、がん細胞の増殖や血管新生を阻害することができます。

(AMPKの活性化を目標としたがん治療の詳細はこちらへ

【哺乳類ラパマイシン標的蛋白質(mTOR)とは】

mTOR(mammalian target of rapamycin)はラパマイシンの標的分子として同定されたセリン・スレオニンキナーゼで、細胞の分裂や生存などの調節に中心的な役割を果たすと考えられています。
ラパマイシン(Rapamycin)は1970年代に、イースター島(モアイ像で有名な南太平洋の孤島)の土壌から発見されたStreptomyces hygroscopicsという放線菌の一種が産生するマクロライド系物質(大環状のラクトンを有する有機化合物)で、免疫抑制剤として臓器移植の拒絶反応を防ぐ薬として使用されています。
ラパマイシンの薬効としては、免疫抑制作用の他に、平滑筋細胞増殖抑制作用抗がん作用寿命延長効果が知られています。
このようなラパマイシンの多彩な薬効は、細胞の増殖やエネルギー産生に重要な役割を担っている細胞内蛋白質に作用することによって発揮されます。このラパマイシンがターゲットにする蛋白質が哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mammalian target of rapamycin)、略してmTOR(エムトール)という蛋白質です。
初め、酵母におけるラパマイシンの標的タンパク質が見出されてTOR(target of rapamycin)と命名され、後に哺乳類のホモログが見出されてmTORと命名されました。
細胞が増殖因子などで刺激を受けるとPI3キナーゼ(Phosphoinositide 3-kinase:PI3K)というリン酸化酵素が活性化され、これがAktというセリン・スレオニンリン酸化酵素をリン酸化して活性化します。活性化したAktは、細胞内のシグナル伝達に関与する様々な蛋白質の活性を調節することによって細胞の増殖や生存(死)の調節を行います。このAktのターゲットの一つがmTORです。Aktによってリン酸化(活性化)されたmTORは細胞分裂や細胞死や血管新生やエネルギー産生などに作用してがん細胞の増殖を促進します。
この経路をPI3K/Akt/mTOR経路と言い、がん細胞や肉腫細胞の増殖を促進するメカニズムとして極めて重要であることが知られています。すなわち、PI3K/Akt/mTOR経路の阻害はがん細胞や肉腫細胞の増殖を抑制し、細胞死(アポトーシス)を誘導することができるため、がん治療のターゲットとして注目されています。
PI3K/Akt/mTOR経路の阻害は、抗がん剤や放射線治療の効き目を高める効果も報告されています。
近年,腫瘍血管新生もラパマイシンによって影響を受けることが報告されています.低酸素による低酸素誘導因子(HIF-1)の活性化にはPI3K /mTOR経路が関与しており,mTOR の阻害によってHIF-1の活性化が抑制されることが報告されています。ラパマイシンがHIF-1の安定化およびHIF-1の転写活性を抑制することが報告されています。
また,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現もラパマイシンによって抑制されることが報告されており,免疫抑制に用いられる用量のラパマイシンががん転移モデルおよび腫瘍移植モデルにおいて著明な抑制効果を発揮し, その作用機序として血管内皮細胞の増殖および管腔形成を共に抑制することが報告されています。
臓器移植に伴うシクロスポリンなどの免疫抑制剤の投与はがんの発生や再発を促進することが知られていますが、mTOR阻害剤は抗腫瘍効果をもつ免疫抑制剤として期待されています。
mTOR阻害剤は免疫抑制という欠点を持ちますが、がん細胞や肉腫細胞の多くにおいてmTORが活性化されているため、抗がん剤として有効性が高く、すでに幾つかのmTOR阻害剤が開発され、抗がん剤として使用されています。
しかしmTOR阻害剤は現時点では腎細胞がんしか使用できず、また、極めて高価です。そこで、漢方薬やサプリメントなどを使って、mTOR阻害を目標にしたがん治療を検討してみる価値があります。
AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化がmTOR阻害作用を示すことが知られています。AMPKを活性化する方法としてメトホルミン、冬虫夏草に含まれるコルジセピン、黄連に含まれるベルベリン、丹参に含まれるクリプトタンシノンなどが報告されています。
ウコンに含まれるクルクミンにmTOR阻害作用が報告されています。ただ、クルクミンは通常の状態では胃腸からの吸収が極めて悪いため、体内でmTOR阻害作用が期待できるかどうかは不明です。
また、PI3KやAktの活性を阻害する薬草成分やサプリメントも知られています。厚朴に含まれるホーノキオール(honokiol)がAkt活性を阻害することが報告されています。ジインドリルメタンもAktを阻害することが報告されています。
丹参のサルビアノール酸(Salvianolic acid)がPI3K活性を阻害することが報告されています。
このような副作用の少ない医薬品やサプリメントを複数組み合わせると、PI3K/Akt/mTOR経路を抑制して、がん細胞や肉腫細胞の増殖抑制に効果が期待できます(下図参照)。

図: PI3K/Akt/mTOR経路の阻害はがん細胞や肉腫細胞の増殖を抑制し細胞死を誘導することができるため、がん治療のターゲットとして注目されている。

 
| ホーム院長紹介診療のご案内診療方針書籍案内お問い合わせ
COPYRIGHT (c) GINZA TOKYO Clinic, All rights reserved.