非小細胞性肺がんの抗がん剤治療におけるアルテスネイトの相乗効果

アルテスネイト(Artesunate)は青蒿(セイコウ:Artemisia annua)というキク科の薬草から分離された成分で、現在ではマラリアの特効薬として世界中で使用されています。このアルテスネイトには抗がん作用があることが報告され、がんの代替医療に使用されています。
進行した非小細胞性肺がんの抗がん剤治療にアルテスネイトを併用すると抗腫瘍効果が高まることが、中国で行われたランダム化比較試験で報告されています。その論文を報告します。

Artesunate combined with vinorelbine plus cisplatin in treatment of advanced non-small cell lung cancer: A randomized controlled trial(進行した非小細胞性肺がんの治療におけるビノレルビンとシスプラチンと併用するアルテスネイト:ランダム化比較試験)Journal of Chinese Integrative Medicine(中西医結合学報)6(2): 134-138. 2008
進行した非小細胞性肺がんに対するビノレルビン(vinorelbine)とシスプラチン(cisplatin)を併用した抗がん剤治療に、アルテスネイトを併用した場合の安全性と有効性を検討する目的で、120例の非小細胞性肺がん患者を対象にランダム化比較試験を行った。
コントロール群の60例は、ビノレルビン (25 mg/m2, once-a-day intravenous injection, at the 1st and 8th day) とシスプラチン (25 mg/m2, once-a day intravenous drip, at the 2nd to 4th day)を併用した抗がん剤治療を受けた。
残りの60例は、同じ抗がん剤治療に、アルテスネイト(120 mg, once-a-day intravenous injection, from the 1st day to 8th day, for 8 days)の投与を追加した。
21日サイクルの治療を少なくとも2回行った。
短期間の生存率(short-term survival rate)と平均生存期間(mean survival time)と1年生存率においては、両群の間に統計的に有意な差を認めなかった。
(統計的有意差は出なかったが、短期間生存率はアルテスネイト併用群が45.1% 対してコントロール群は 34.5%, 1年生存率はアルテスネイト併用群が 45.1%に対してコントロール群は 32.7%と、アルテスネイト併用によって生存率が高まる傾向が示唆された)
しかし、病勢コントロール率(disease controlled rate:著効CR+有効PR+不変NCの患者)はアルテスネイト併用群が88.2%でコントロール群が72.7%で統計的に有意な差(P<0.05)が認められた。
さらに、無進行期間(time to progression)は、アルテスネイト併用群が24週に対してコントロール群が20週で、これも統計的に有意な差であった(P<0.05)。
両群の間で副作用(骨髄抑制や消化器症状など)の程度には差は認められなかった。
この臨床試験の結論として、非小細胞性肺がんのビノレルビンとシスプラチンを使った抗がん剤治療にアルテスネイトを併用すると副作用を高めることなく、抗腫瘍効果を高めることが示唆された。

シスプラチンを使用した肺がんの抗がん剤治療に、黄耆(オウギ)を使用した漢方治療を併用すると、抗がん剤治療の副作用を軽減し、生存率を高めることが複数のランダム化比較試験のメタ解析で示されています。(021参照
また、メラトニンが肺がんの抗がん剤治療の副作用を軽減し、生存率を高めることが報告されています。(017参照
黄耆(オウギ)を使用した漢方治療とメラトニンとアルテスネイトは、進行肺がんの抗がん剤治療と併用する代替医療として、ある程度の根拠があると思います

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