小細胞性肺がんに対するサリドマイドの効果

肺がんは大きく分けると2種類、すなわち小細胞性肺がん非小細胞性肺がんに分類することができます。非小細胞性肺がんには、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどがあります。小細胞性肺がんと非小細胞性肺がんを区別するのは、小細胞性肺がんは他の肺がん(非小細胞性肺がん)と性質や治療法がかなり異なるからです。

小細胞性肺がんは、肺がん全体の15〜20%を占めます。
小細胞性肺がんは抗がん剤や放射線が効きやすいという特徴があるのですが、進行が早く、再発しやすい性質を持っています
非小細胞性肺がんは小細胞性肺がんに比べると進行がゆっくりですので、早い時期に見つかったものは手術によって治癒するものが多く見られます。しかし、
小細胞がんの多くは、手術の対象になることは少なく、抗がん剤や放射線治療が中心になります

小細胞性肺がんは抗がん剤や放射線治療が効きやすいのですが、再発しやすく、長期の生存率が低いのが問題になっています。
最近の研究で、
小細胞性肺がんにサリドマイドなどの血管新生阻害剤が効く可能性が示唆され、臨床試験が行われています。
 以下の論文に示すように、小細胞性肺がんの抗がん剤治療後にサリドマイドを使用すると再発が抑えられる可能性が報告されています。

抗がん剤治療後の進行小細胞性肺がんの維持療法としてのサリドマイドの第2相試験
Phase II trial of thalidomide as maintenance therapy for extensive stage small cell lung cancer after response to chemotherapy.
Lung Cancer. 2007 Feb 26; [Epub ahead of print]

米国のCase Western Reserve 大学などの研究グループからの報告。
【要旨】小細胞性肺がんは悪性度が高く増殖の早いがんで、その治療法はこの20年間ほとんど進歩していない。
小細胞性肺がんは血管が豊富ながんであるため、血管新生阻害を目的とした薬の治療効果が検討されている。血管新生阻害作用を有するサリドマイドの、小細胞性肺がんの有効性を検討する目的で第2相臨床試験を行った。
30例の小細胞性肺がん患者に、first-lineの抗がん剤治療の終了3〜6週間後に、
1日200mgのサリドマイドの投与を開始した。
毒性は少なく(minimal)でグレード1の神経障害が27%、グレード3の神経障害は1例に認めた。抗がん剤治療後の生存期間の平均は12.8ヶ月、1年生存率は51.7%であった。サリドマイド服用の平均期間は79日であった。
小細胞性肺がんの抗がん剤治療後の維持療法としてサリドマイド200mg/日の投与は、副作用が少なく服用できる量であった。さらに有効性についての検討が必要である。

抗がん剤治療後のサリドマイドの投与によって長期生存した小細胞性肺がんの1例
Long-term survival of a patient with small-cell lung cancer (SCLC) following treatment with thalidomide and combination chemotherapy. Angiogenesis. 2002;5(1-2):11-3.

ドイツのハンブルク大学からの報告。
進行した小細胞性肺がんの73歳女性に対して、アドリアマイシン、シクロホスファミド、オンコビンを併用した抗がん剤治療6コースでがんが寛解した後、1日200mgのサリドマイドを2年5ヶ月間投与した。このフォローアップ期間、再発の徴候は見られなかった。この長期生存に対するサリドマイドの関与は不明であり、1例の症例だけで結論を出す証拠は無いが、小細胞性肺がんの抗がん剤治療後に血管新生阻害剤のサリドマイドの有効性が示唆されるので、さらに研究が必要である。

【考察】福田一典の個人的な意見です。
小細胞性肺がんに対するサリドマイドの有効性はまだ、臨床試験の段階ですが、効く可能性は高いようです
その理由は、サリドマイドは、多発性骨髄腫のような造血器腫瘍に良く効き、さらに神経系腫瘍や血管の豊富な肉腫やがんにも効果があるのですが、小細胞性肺がんはサリドマイドが効きやすいこれらの腫瘍と似た性質を持っているからです。つまり、小細胞性肺がんは血管が豊富で、神経系細胞や肉腫のような性質を持っています。
私のクリニックでも、進行した小細胞性肺がんにサリドマイドを使用した患者さんが数人いますが、確かに効いているようです。一人の患者さんは、再発した抗がん剤抵抗性の小細胞性肺がんで、サリドマイド治療を続けて4年以上元気に生存しています。2番目の文献では、抗がん剤治療で寛解(臨床的にがんが見えなくなること)した後に長期生存した症例の報告ですが、私の患者さんは、再発して抗がん剤が効きにくくなった段階で、抗がん剤を使わずサリドマイドだけで4年以上元気に生活しています。
また、末期状態でサリドマイドを使った患者さんも、実際の予測よりも数ヶ月間の延命効果を経験しています。

小細胞性肺がんで、抗がん剤治療後の再発予防や、抗がん剤抵抗性の患者さんの代替医療としてサリドマイドは、試してみる価値があると感じています

 
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