参考:CA Cancer J Clin 2006; 56:323-353
Nutrition and Physical Activity During and After Cancer Treatment: An American Cancer Society Guide for Informed Choices
しかし、必要以上に野菜や果物を多く食べても、さらに再発率を下げたり、生存期間を延ばすという効果は少ないようです。
診断後10年近く追跡調査した臨床試験( the Nurses' Health Study)に参加した乳がんサバイバーの最近のデータでは、野菜や果物や精白していない穀物を多く摂取し、砂糖や精白した穀物や動物性食品の量を減らすような理想的な食事を行っても、再発率やがんに関連した死亡率を有意に減らす効果は認められませんでした。しかしながら、このような食事を行ったグループでは、典型的な西洋食を食べていた人達に比べて、他の病気での死亡率を低下させました。
参考:JAMA. 18;298(3):289-98.2007
Influence of a diet very high in vegetables, fruit, and fiber and low in fat on prognosis following treatment for breast cancer: the Women's Healthy Eating and Living (WHEL) randomized trial.
【アルコール】
アルコール摂取は血中のエストロゲンの量を増やすので、理論的にはエストロゲン受容体陽性の乳がんの再発率を高める可能性がありますが、この点に関してはまだ結論をだせるほどの研究は行われていません。
アルコールが乳がんの発生リスクを高めることは知られていますが、乳がんサバイバーの再発率や生存期間に対してアルコールが影響するかどうかに関する証拠は十分ではありません。乳がん患者の予後を検討する研究において、研究の対象になる患者の飲酒量が非常に少ないため、アルコールの影響が判りにくいからです。しかしながら、理論的には、乳がんサバイバーでは高いリスクにある別の乳がん(second primary breast cancer)の発生を促進する可能性はあります。
アルコールは、健康にとって良い面と悪い面の両方を持っています。一般に、中等度の飲酒(1日に1〜2杯程度)は心臓疾患の発生リスクを低下させるという証拠が多く出されています。
乳がんサバイバーの場合は、中等度の量の飲酒の有益性を検討するとき、心臓疾患の発生を低下させるメリットと、乳がんの再発や新たな発生を促進する可能性のデメリットを考慮しなければならないので、問題は複雑です。
したがって、基本的には、乳がんの再発予防も目的ではアルコールは控える方が無難ですが、1日に1〜2杯程度の飲酒であれば、ストレス緩和やリラクセーション効果、血液循環の改善などのメリットもあるので、許容できると思います。ただし、抗がん剤治療中は少量の飲酒も勧められません。
参考:CA Cancer J Clin 2006; 56:323-353
Nutrition and Physical Activity During and After Cancer Treatment: An American Cancer Society Guide for Informed Choices
追加:
中国の上海で行なわれた乳がん患者調査(Shaghai Breast Cancer Survival Study)では、手術を受けた乳がん患者5033人を追跡調査し、大豆製食品の摂取量と、死亡率や再発率との関連について検討されています。その結果が2009年に報告されています。この研究結果によると、ホルモン依存性の乳がんでも、ホルモン療法を受けている乳がん患者でも、大豆製食品を全く食べないよりは通常の量を摂取する方が再発率も死亡率も低下することが示されています。
乳がん患者における大豆製食品や大豆イソフラボンに関する最近の研究結果と考え方については以下のサイトを参照して下さい。
○乳がん患者は大豆製食品をどの程度食べてよいのか?:
○乳がん患者の大豆イソフラボン摂取の影響:新たな事実: