膵臓がんの抗がん剤感受性を高めるジインドリルメタン

膵臓がんは抗がん剤治療が効きにくいがんの代表です。膵臓がんは治療を始めた時点ですでに多くの抗がん剤に対して抵抗性(耐性)であることが多く、抗がん剤治療によってさらに抗がん剤耐性を獲得することが知られています。 したがって、がん細胞の抗がん剤対する耐性獲得を阻止して抗がん剤感受性を高める方法は、抗がん剤の治療効果を高めることができます。ジインドリルメタン(diindolylmethane)が膵臓がんの抗がん剤耐性を弱め、抗がん剤治療の効き目を高めることが報告されています。

【ジインドリルメタンとは】

ジインドリルメタンは、ブロッコリーやケールなどのアブラナ科の植物や野菜に含まれるグルコブラシシン(Glucobrassicin)という成分が体内で変化して生成される物質です。 すなわち、グルコブラシシンが加水分解してインドール-3-カルビノール(Indole-3-carbinol)になりますが、インドール-3-カルビノールは不安定で、胃の中の酸性の条件下ではインドール-3-カルビノールが2個重合したジインドリルメタン(3,3-diindolylmethane)になります(下図)。
ジインドリルメタンは消化管から容易に吸収され、体中の臓器や組織に移行することが知られています。 ジインドリルメタンには、乳がんや前立腺がんや膵臓がんなど多くのがん細胞の増殖を抑え、細胞死(アポトーシス)を誘導すること、がん細胞の抗がん剤感受性を高める効果などが報告されています。

グルコブラシシン
(Glucobrassicin)
 
インドール-3-カルビノール
(Indole-3-carbinol, I3C)
 
ジインドリルメタン
(3,3'-diindolylmethane, DIM)

【ジインドリルメタンはがん細胞の抗がん剤感受性を高める】

膵臓がんを含め多くのがん細胞では、セリン・スレオニン・リン酸化酵素のAktキナーゼや核内転写因子NF-κBが恒常的に活性化していることが多く、このようなAktやNF-κBの活性化が抗がん剤に対する抵抗性獲得の原因となっています。
培養細胞や動物を使った実験で、ジインドリルメタンは、Akt/NF-κBシグナル伝達系を阻害する作用によって、がん細胞の細胞死(アポトーシス)を誘導する作用、抗がん剤に対する感受性(抗がん剤が効きやすくなること)を高める効果が報告されています
例えば、乳がん細胞に対するタキソールの効果、前立腺がん細胞の対するタキソテールの効果、膵臓がんに対する抗がん剤(シスプラチン、ジェムシタビン、オキサリプラチン)やタルセバ(erlotinib)の効果を高めることが報告されています。 さらに、NF-κBの活性を阻害することによって、NF-κBによって調節を受け、血管新生やがん細胞の浸潤や転移に関与しているVEGF(血管内皮細胞増殖因子)やIL-8やMMP-9(マトリックス・メタロプロテアーゼ-9)やuPA(ウロキナーゼ型プラスミノゲン・アクチベータ)などの遺伝子発現を抑え、がん細胞の増殖や転移を抑える効果も報告されています。

図:がん細胞内でAkt/NF-κBシグナル伝達系が活性化されると、がん細胞の増殖、抗がん剤抵抗性、血管新生、浸潤・転移が促進される。ジインドリルメタンは、がん細胞のAkt/NF-κBシグナル伝達系を抑制することによって、がん細胞の増殖を抑制し、抗がん剤感受性を高める効果を発揮する。

膵臓がんの抗がん剤感受性を高めるジインドリルメタンの作用機序に関しては、以下の論文が参考になります。

Apoptosis-inducing effect of erlotinib is potentiated by 3,3'-diindolylmethane in vitro and in vivo using an orthotopic model of pancreatic cancer.(膵臓がんの培養細胞と動物を用いた実験モデルにおけるerlotinibによるアポトーシス誘導作用はジインドリルメタンで増強される)Mol Cancer Ther. 7(6):1708-1719 2008

Erlotinib(商品名:タルセバ)は上皮成長因子受容体(EGFR)を阻害する抗がん剤であるが、EGFRだけを阻害しても、がん細胞の増殖を抑える効果には限界がある。EGFRの他にも、細胞増殖に関連するシグナル伝達を抑えると、がん細胞の増殖を抑える効果を高めることができる。
この報告では、erlotinibによって誘導されるアポトーシスをジインドリルメタンが増強することを、培養細胞(in vitro)と動物(in vivo)を使った実験で示している。 膵臓がんの培養細胞をジインドリルメタン (20 micromol/L)とerlotinib (2 micromol/L)を一緒に添加すると、それぞれ単独で添加した場合と比べて、がん細胞のアポトーシスが増強した。動物実験においても、ジインドリルメンタンはerlotinibの抗腫瘍効果を増強した。
作用機序としては、ジインドリルメタンは転写因子NF-κBの活性を阻害することによって、erlotinibに対するがん細胞の抵抗性を低下させることが示唆された。

3,3'-Diindolylmethane Enhances Chemosensitivity of Multiple Chemotherapeutic Agents in Pancreatic Cancer(ジインドリルメタンは膵臓がん細胞における多種類の抗がん剤の感受性を高める)Cancer Res 69:5592-5600, 2009

培養膵臓がん細胞を使った実験で、ジインドリルメタンで前処理すると、抗がん剤(シスプラチン、ジェムシタビン、オキサリプラチン)に対する感受性を高め、単独で効く濃度よりも少ない濃度で、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導した。 膵臓がん細胞の抗がん剤耐性の機序として、核内転写因子のNF-κBの活性化が関連しており、抗がん剤治療によってNF-κB活性はさらに活性化される。がん細胞の抗がん剤耐性や死ににくさに関連してる遺伝子(Bcl-xLやsurvivinなど)の発現がNF-κBの活性によって制御されているため、NF-κB活性を抑えると、がん細胞は抗がん剤治療に対して効きやすくなる。
ジインドリルメタンは、膵臓がんですでに高くなっているNF-κB活性と、抗がん剤治療によって誘導されるNF-κBの活性化をともに抑制することによって、抗がん剤治療に対するがん細胞の感受性(死にやすさ)を高める さらに、動物を使った実験でも、がん組織のNF-κB活性を抑制することによって、オキサリプラチンの腫瘍縮小効果を増強することが示された。
以上の結果から、抗がん剤治療にジインドリルメタンを併用すると、がん細胞におけるNF-κB活性が抑制され、抗がん剤治療の効果が高められることが示唆された。

Concurrent inhibition of NF-kappaB, cyclooxygenase-2, and epidermal growth factor receptor leads to greater anti-tumor activity in pancreatic cancer.(NF-κBとシクロオキシゲナーゼ-2と上皮成長因子受容体の同時阻害は膵臓がんに対する抗腫瘍効果を高める)J Cell Biochem. 110(1):171-81.2010

転写因子NF-κBや、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)、上皮成長因子受容体(EGFR)のそれぞれは、がん細胞の増殖と生存を促進する作用がある。これらの活性を単独で阻害しても、進行した膵臓がんの治療には十分な効果は得られないことが臨床試験の結果明らかになっている。しかし、この3つの活性を同時に阻害すると、細胞増殖の抑制とアポトーシス(細胞死)の誘導が著明に増強される。
ジインドリルメタンはNF-κBとCOX-2をともに阻害する作用が報告されており、がん予防物質として知られている。 膵臓がん培養細胞を使った実験(in vitro)と膵臓がんを移植したマウスの実験(in vivo)で、EGFRの阻害作用を有するerlotinib(商品名:タルセバ)と、NF-κBとCOX-2の阻害作用を有するジインドリルメタンの併用は、gemcitabine(商品名:ジェムザール)の抗腫瘍活性を著明に増強した
この研究結果は、進行膵臓がんに対するジェムザールとタルセバによる治療に、ジインドリルメタンを併用すると、抗腫瘍効果を高めることができることを示唆している

以上のような研究結果から、膵臓がんの抗がん剤治療(ジェムザール、TS-1、タルセバなど)に、ジインドリルメタン製剤のDIM-ProとCOX-2選択的阻害剤のcelecoxib(商品名:セレブレックス、セレコックス)を併用すると、抗腫瘍効果を高めることが期待できます

米国ではジンドリルメタンのサプリメントが販売されています。その中で消化管からの吸収効率が高くなるように製剤化したDIM-PRO 100が推奨されています。

DIM-PRO 100

抗がん作用のあるジインドリルメタンを、体内に吸収しやすく製剤化した米国製のサプリメントです。
ジインドリメタンは、乳がんや前立腺がんをはじめ、その他多くのがん細胞の増殖を抑え、細胞死(アポトーシス)を誘導する効果が報告されています。免疫増強作用や、がん細胞の抗がん剤感受性を高める効果も報告されています。
1ヶ月分/120カプセル:12,000円(消費税込み)
製造:DaVinci Laboratories of Vermont

ご希望の方はメール(info@f-gtc.or.jp)でお問い合わせ下さい。

DIM-PRO 100の1カプセル中には腸管からの吸収効率を高めたジインドリルメタン複合体が含まれています。
DIM-PRO 100は1日に4カプセルを食後(通常、朝と夕の食後に2カプセルづつ)に服用します。抗がん剤の抗腫瘍効果をさらに高めるために、1日6~8カプセルに服用量を増やすと効果が高まります。
副作用は特にありませんが、尿がオレンジや褐色になることがあり、血尿と間違われることがあります。これはジインドリルメタンの代謝産物の色で血尿ではありません。 抗がん剤と併用しても問題はありません。抗がん剤の効き目を高めます。
ジインドリルメタンは日本ではサプリメントとして認められていません。銀座東京クリニックでは厚生労働省から薬監証明を取得して医師(福田一典)が個人輸入したものを医薬品と同じ扱いで処方薬として治療に使用しています。

○ ジインドリルメタンはがん細胞のHippo経路を活性化してPI3K/Akt経路を阻害するメカニズムでアポトーシスを誘導することが報告されています。(詳しくはこちらへ

○ ジインドリルメタンはIL-6/STAT3経路を阻害します。(詳しくはこちらへ

○ 膵臓がんの治療にジインドリルメタンとビタミンD3とオーラノフィンの併用は有効です。(詳しくはこちらへ

◯ 膵臓がんの抗がん剤治療の効果を高める方法はこちらへ

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