熟成黒ニンニクについて
はじめに:
ニンニクは食材としてだけでなく、健康食品(サプリメント)としても世界中で根強い人気があります。その理由は、ニンニクの薬効が人体における使用経験で古くから認められてきたからです。
ニンニクは様々な効能が広範囲にわたって実証されていますが、特に、感染症、循環器病、がん予防の領域においては優れた効果が証明されています。
ニンニクには、免疫力を増強させる効果があり、病原菌やがん細胞に対する抵抗力を高める効果が期待できます。
ニンニクは循環器病の予防と治療効果をもつことが多くの動物実験および臨床試験により認められています。特に注目されているのは、コレステロールや血圧を低下させる効果で、心臓発作や脳卒中のリスクを減らすためにニンニクが推奨されています。
また、ニンニクにはがん予防成分が豊富に含まれており、がん予防食品のトップに位置付けられています。
生のニンニクは臭いや胃腸の刺激作用で、多くを摂取することは困難ですが、ニンニクを熟成させると、臭いがなくなり、刺激性も減少し、抗酸化力が高まり、がん予防効果のあるS-アリルシステインなどの新規成分が生成されることが知られています。 
このようなニンニクの健康作用をさらに高め、驚異的な抗酸化力をもつ熟成黒ニンニクは、抵抗力を高め、老化を防ぐ食品として期待がもてます。

(銀座東京クリニック:福田 一典)

熟成黒ニンニクとは:
熟成黒ニンニクは、一定の温度と湿度のもとで、約1ヶ月間熟成させることによって作られます。乳白色の生ニンニクと異なり、十分に熟成したニンニクは色が真っ黒になります。
色が変わるということは、熟成によって含まれる成分が変化することを意味しています。

まず、熟成させることによって臭いの原因となる揮発性のイオウ化合物が減るため、食べた後に吐息とともに体内から臭ってくるニンニク特有の不快臭が全く無いことが大きな特徴です。
そして、ポリフェノール類の含量が増え生ニンニクには存在しないS-アリルシステインという水溶性含硫アミノ酸が生成します。

その結果、抗酸化力は、原料となる生ニンニクに比べて著明に上昇し、がん予防、コレステロール低下、動脈硬化改善、心疾患予防などの効果が生ニンニクよりも 著明に増強することが明らかになっています。

熟成黒ニンニクの驚異の抗酸化力:
様々の野菜の中で、ニンニクが最も強い抗酸化力を有するという報告もあります。ニンニクに特有なイオウ化合物は活性酸素消去活性が強く、抗酸化酵素のグルタチオン・ペルオキシダーゼの活性に必要なセレンを多く含む等、ニンニクには抗酸化力を高める成分が豊富に含まれているからです。

ニンニクを熟成させると抗酸化力が高まることが知られています。実際にどの程度の抗酸化力があるかを、通常のニンニクと比較する実験を行いました。サンプルは黒ニンニクと熟成させる前のニンニクの粉末を用い、水で抽出される成分(水溶性成分)とアルコールで抽出される成分(脂溶性成分)で抗酸化力を測定しました。その結果、熟成前の通常のニンニクに比べて黒ニンニクでは、水溶性成分の抗酸化力(SOD法で測定)は8.7倍、脂溶性成分の抗酸化力(DPPH法で測定)は79倍という極めて高い活性を示しました(下図)。

黒ニンニクは水溶性と脂溶性の抗酸化物質が豊富です:
水溶性の成分は体内でビタミンCと同じように体液の活性酸素を除去し、脂溶性成分はビタミンEと同じように細胞膜や脂質の酸化を防ぎます。
黒ニンニクの脂溶性成分の抗酸化力は100g中にビタミンEが4gも含まれているのに相当するだけの抗酸化力を示し、 黒ニンニクの抗酸化力の活性が極めて高いことが判ります。

抗酸化物質を摂取して健康に役立てるためには、水溶性のものと脂溶性のものを一緒に摂取することが大切です。ビタミンCとビタミンEも単独で取るよりも一緒に摂取する方が良いことはよく知られています。
熟成黒ニンニクは、これ一つで、水溶性と脂溶性の抗酸化物質を高い活性で摂取できるので、極めて有用な抗酸化性食品と言えます

熟成黒ニンニクは水溶性と脂溶性の両方の抗酸化物質を持つことによって、体内の広範囲の成分の酸化を防止できる。
S-アリルシステインは生ニンニクには含まれない新規物質で、多彩な健康作用が報告されています:
ニンニクを熟成させると、本来存在していなかったS-アリルシステイン(S-allylcysteine, SAC)S-アリルメルカプトシステイン(S-allyl-mercapto-cysteine)という新しい成分が出現することが知られています。 

SACは水溶性イオウ化合物で、経口摂取でほとんどが血液中に吸収されます。ラットの試験では、経口摂取後の血漿中、肝臓、腎臓、肺などの臓器のSACの濃度は15〜30分という短時間でピークに達しています。SACは、抗酸化作用、肝障害予防作用、がん予防作用、がん細胞増殖抑制作用など多様な薬理作用を有することが報告されています。

ニンニクの活性成分の本体は、生ニンニクを破砕することにより生じる臭い成分(アリシンなどの揮発性有機イオウ)であると、多くの書物に記載されています。しかし、アリシンは非常に不安定で、血液中では検出されないことなどから、ニンニクの薬理作用がアリシンに帰結するという考え方については疑問もでてきています。
がん予防の分野でも、臭いのないニンニクにはがん予防効果はないと考えられてきましたが、臭いのない水溶性含硫アミノ酸であるS-アリルシステインなどにも強いがん予防活性が見つかっています

つまり、「臭いのないニンニクにはパワーが無い」というのは間違いで、臭いがなくても、抗酸化、がん予防、体力増進、疲労回復促進などの効能を持つ成分がニンニクの中には含まれていることが最近の研究で明らかになってきました。

ニンニクは免疫力を増強する:
免疫」とは、体に対して異物になるものに攻撃を仕掛けて排除しようとする生体防御の要です。異物とは外部から侵入してきた細菌やウイルスやカビなどの病原菌のみならず、体内に生じたがん細胞も含まれます。免疫細胞には多核白血球(顆粒球)、リンパ球、マクロファージ(貪食細胞)などがあり、これらがお互いに連携し役割を分担しながら、病原体やがん細胞を見つけては排除してくれます。
ニンニクには、Tリンパ球、好中球、マクロファージの病原菌攻撃作用を増強させ、リンパ球からのインターロイキン(免疫細胞の働きを調節するタンパク質)の分泌を増加させ、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化させることが知られています。日頃からニンニクを摂取するとNK細胞活性が約1.5倍くらいに増加するという報告もあります。
ニンニクは万能薬:
ニンニクは、大昔からさまざまな病気の治療に利用されてきました。古代インドやギリシャでは、ニンニクは感染症やがんや消化器疾患など様々な病気を治す万能薬として利用されてきました。古代エジプトでは、ピラミッド建築に従事した労働者に、重労働に耐えるための体力増強や疲労回復の目的でニンニクが支給されたという記録が残っています。古代ローマにおいても競技や戦闘時に強壮剤として賞揚されていました。

ニンニクは食材としてだけでなく、健康食品(サプリメント)としても世界中で根強い人気があり、米国ではニンニクは健康食品の中で売り上げトップの位置を占めています。この人気の理由は、ニンニクの薬効が人体における使用経験で古くから認められてきたからです。
ニンニクは様々な効能が広範囲にわたって実証されていますが、特に、感染症、循環器病、がん予防の領域においては優れた効果が証明されています。

ニンニクは がん予防食品のトップ:
中国の疫学調査によると、ニンニクやその仲間(ニラ、ネギ、ラッキョウ、アサツキなど)の野菜を多く食べている地域の住民は、そうでない地域と比べて胃がんと食道がんの発生率が3分の1以下であることが報告されています。ニンニクの摂取が多いと大腸がんの罹患率が低いことも報告されています。
こうした疫学調査に加え科学的な成分研究の結果、ニンニクなどアリウム属の野菜からがんの発生や増殖を抑制する成分が数多く見つかっています。
がん予防に有効な野菜、果物、香辛料などが 米国 から発表されていますが、ニンニクはその頂点に位置づけられています。
黒ニンニクは代謝を亢進して冷えを改善します:
中国医学におけるニンニクの薬性(性質)は『辛で温』とされており、これは血液の循環を促進させ、体を温める作用を意味しています。
ニンニクは、血管拡張作用や血液の流動性を高める作用によって血液循環を良くします。さらに、代謝を亢進して体熱産生を高め、冷えを改善します。冷え性の人に服用させると皮膚温を上昇させ、四肢の冷え、しびれ、腰の冷えなどを改善する効果が確かめられています。
これらの作用は、ニンニクの体力増強作用や疲労回復促進作用とも関連しています。
黒ニンニクには生ニンニク以上に、血液循環や冷えを改善する効果が認められています。

抗酸化力を高めるとがんや成人病を予防できます:
人は生命活動を営む上で酸素を必要としていますが、生体内では酸素消費の過程で絶えず活性酸素を生成しています。この活性酸素は体を構成する蛋白質や脂質や核酸などを酸化します。体内で発生する活性酸素以外にも、タバコや排気ガスや紫外線などから発生するフリーラジカルが体を酸化しています

酸化というのは、鉄くぎが赤くサビるのと同じです。体の蛋白質や脂質や遺伝子が酸化されると、老化や癌の発生を促進すると考えられています。体には活性酸素を消し去る酵素(SODやカタラーゼなど)や消去物質(抗酸化物質)が備わっており、絶えず活性酸素を掃除してくれています。しかし、消去しきれなかった活性酸素は、血管内皮細胞障害を引き起こしたり、細胞膜の脂肪酸を酸化して過酸化脂質を生成させ、これが契機となって、動脈硬化やがんなどの疾患が発症します。

体内で絶えず生成する活性酸素の除去および過酸化脂質の生成を抑制することは、体の老化を防ぎ、成人病を予防するための基本と言えます。体の抗酸化力を高めることは、成人病や癌や老化を抑える効果が期待できるのです。

体を酸化させる活性酸素やフリーラジカルは、体内で絶えず発生し、環境中にも満ちあふれています。 活性酸素やフリーラジカルが体の構成成分が酸化することによって癌や老化や動脈硬化性疾患が進むと考えられています。
ニンニクは動脈硬化を予防し血液循環を良くします:
ニンニクは循環器病の予防と治療効果をもつことが多くの動物実験および臨床試験により認められています。
特に注目されているのは、コレステロールや血圧を低下させる効果で、心臓発作や脳卒中のリスクを減らすためにニンニクが推奨されています。
循環器系に対するニンニクの主な作用として、コレステロール低下作用、リポタンパク(LDL)の酸化防止作用、血圧低下作用、血小板凝集抑制作用があります。さらに、血液線溶系活性を上昇させて血栓の除去を促す作用や、体の隅々の血行(末梢循環)を良くする作用などが知られています。冷え性の人に服用させると皮膚温を上昇させ、四肢の冷え、しびれ、腰の冷えなどを改善する効果もあります。

日本人の3大死因は、がん・心臓病・脳血管疾患ですが、このうち心臓病と脳血管疾患は動脈硬化を基礎としており、血の巡りが悪くなって、血管の一部が詰まる結果起こります。
『ヒトは血管と共に老いる』と言われていますが、年をとっても「きれいな血液」「きれいな血管」を保つことができれば、それだけ若々しくいられ、病気にもなりにくい体を維持できます。ニンニクを日頃から食べることは、血管や血液をきれいにすることによって、循環器疾患の発症と進行を防止する助けとなるのです。

 

 
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