がん(癌)は早期に見つかれば根治が可能ですが、進行すると確実に治す治療法が無い病気です。医学が進んだ現代においても、がんと診断された人の半数近くが数年以内に亡くなっています。  

がん治療の基本は、がん細胞を手術で切除するか、あるいは抗がん剤や放射線で死滅させることです。このようながん細胞を直接攻撃する手術・抗がん剤・放射線治療の3つががんの標準治療になっています。  

標準治療とは別に、食事療法サプリメント漢方薬などを使ったがん治療も行われています。このような治療は、標準治療の副作用の軽減や、生活の質の向上、再発予防、延命などを期待して行われています。標準治療が効かなくなり西洋医学から見放された患者さんが、最後の手段として行う場合もあります。  

食事療法やサプリメントは、栄養素の補助や、体力や抵抗力を高める目的で利用されています。
漢方治療は薬効成分を多く含む薬草などの天然薬(生薬)を使い、食事療法やサプリメントより高い効果が期待できます。 薬草や生薬の成分の中には、がん細胞の増殖を抑えたり、死滅させる成分も見つかっており、がんを縮小させる効果もあります。  

民間薬やハーブを使った治療は単一の薬草の効能を単純に利用するだけであり、病人の呈する症状や病態を詳しく分析する理論はありません。便秘にアロエやセンナ、下痢止めにゲンノショウコといった具合に症状に合わせて飲んだり、健康増進や病気の予防の目的でお茶代わりに飲むのがほとんどです。  

しかし、がん患者さんの様々な症状に適切に対処するには単一の薬草を煎じて服用するだけでは効果に限界があります。効果を高めるためには漢方の考え方や方法論が役立ちます。  

本書では、漢方薬ががん治療に役立つ理由と根拠を解説しています。

目次

はじめに

第1章:がんと戦うために必要な基礎知識

●がんは身内の反乱
●細胞の増殖や死は遺伝子によってコントロールされている
●がん遺伝子とがん抑制遺伝子
●遺伝子の変異とは
●がん細胞は多段階的に発生・増悪する
●がんの自然史
●私達にはがんに対する自然治癒力が備わっている

第2章:西洋医学と漢方医学は相互に補完しあえる

● がん治療における西洋医学と漢方医学の視点の違い
●「虚」を補う思想が、漢方薬を発達させた
● 漢方は栄養と循環の改善を重視する
● 体に備わる治癒力を引き出す漢方医学

第3章:天然薬の複合効果で効き目を高める漢方

● 「がんとの共存」や「がんの自然退縮」を可能にする自然治癒力
● 自然治癒力を気・血・水で考える漢方医学
● 治癒力を妨げる要因を取り除き、足りない部分を補う
● ドクダミ茶やアガリクスは漢方薬ではない
● 生薬は天然の薬物
● 漢方薬の効果の秘密は生薬の複合効果にある
● オーダーメイド医療における西洋医学と漢方医学の違い
●がん治療における漢方治療の目的とは 
●どのようなときに漢方薬を使用したら良いのか

第4章:栄養状態を良くし元気を高める補気健脾薬

● 自然治癒力の源は食物からの栄養素
● 自分にあった漢方薬で食欲を高める
● 胃腸の働きを整える健脾薬
● 「気」とは体を動かす生命エネルギー
● 気の量が不足した状態を「気虚」という
● 気の不足を補い元気を高める補気薬の代表は人参と黄耆
●補気剤の代表:補中益気湯
●高麗人参はがんに対する抵抗力を高める
●メタ解析で示された黄耆の効果
●下痢の原因によって生薬を使い分ける
●下痢に使われる漢方薬
●塩酸イリノテカンの下痢に対する半夏瀉心湯の予防効果
●手術後の合併症を予防する漢方薬

第5章:免疫力と治癒力を高める補血薬と駆瘀血薬

●体にはがんを押さえ込む免疫力が備わっている
●漢方薬は免疫力が高まる体の状況に仕上げる
●補剤は細胞性免疫を高める
●攻撃的がん治療では気と血が不足する
●血虚とは、血生成の不足や出血過多による症状
●気と血を補う気血双補剤
●血液循環が悪いと組織の治癒力が低下する
●組織の回復力を高める駆瘀血薬とは
●駆瘀血薬はがん治療の効果を高める

第6章:標準治療をサポートする漢方治療

●外科手術と気血水との関係
●漢方薬は手術後の回復力を促進する
●抗がん剤で正常組織もダメージを受ける
●抗がん剤治療の副作用を軽減する漢方治療
●細胞保護作用をもつ柴胡剤

第7章:がん細胞の増殖を抑える抗がん生薬

●植物毒が抗がん剤に使用されている
●抗がん活性のある生薬
●がんとの共存に役立つ抗がん生薬
●白花蛇舌草の抗がん作用
●半枝蓮の抗がん作用
●白花蛇舌草と半枝蓮の組み合わせが各種がんの治療に使われている
●竜葵(リュウキ)の抗がん作用
●紫根の抗がん作用
●植物ポリフェノールはがん細胞の酸化ストレスを高める

第8章:再発予防における漢方治療の役割

●がんは全身病
●がん体質と関連する気・血・水の異常
●生薬成分の相乗効果によってがん体質を改善する
●がん患者は冷え症の人が多い
●冷えは治癒力を低下させる
●食品や生薬には寒熱の区別がある
●冷えを改善する生薬

第9章:緩和医療における漢方治療の役割

●体力・抵抗力を高めれば延命できる
●補気薬と補腎薬で生命力を高める
●粘膜の抵抗力を高める滋陰薬
●絶望感や不安感は、治癒力を低下させる
●悪液質を改善すると延命効果がある
●免疫を活性化すると悪液質が悪化することもある
●悪液質改善に清熱解毒薬や駆瘀血薬が役にたつ
●がん患者の倦怠感は多くの要因が関与
●倦怠感に対する人参の効果
●倦怠感を緩和する漢方薬
●目に見えない副作用に対処する漢方治療

第10章:漢方薬の正しい使い方

●天然薬だから安全という先入観は危険
●がん治療中は素人判断での服用は危険
●海外からの個人輸入は危険
●不快な症状が出たら直ぐに中止する
●免疫力を高めるだけでは逆効果もある
●抗がん剤とハーブ・漢方薬の相互作用
●薬物代謝酵素への影響
●ハーブ・漢方薬は血液凝固やホルモン作用に影響する場合もある
●抗がん剤治療中のハーブ・漢方薬はほどほどに
●医薬品との相互作用に注意
●手術前のハーブの使用には要注意

第11章:実際の症例

●  漢方治療で抗がん剤の副作用の克服
●治癒切除後の胃がんの再発を漢方治療で防ぐ
●放射線照射や抗がん剤治療の効果を高めることもできる
●肝臓がんの再発を漢方薬で遅らせる
●再発した胃がんが漢方薬だけで縮小
●漢方薬で増殖が抑えられた肺がんの症例
●末期がんのQOL改善と延命に役立つ漢方治療 
●エキス製剤の使用法

第12章:Q&A

おわりに

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