匙を投げられた進行肝がんがサリドマイドとセレブレックスで縮小 

Tさん(59歳、男性)は以前からC型肝炎ウイルスによる肝硬変の診断を受けていましたが、特に自覚症状がないので治療は受けずに放置していました。3ヶ月程前に全身倦怠感や食欲不振などの体調不良を訴えて久しぶりに検査を受けたところ大きな肝臓がんがみつかりました。約10cmのがんが右葉に1個あり、さらに2〜5cm大のがんが肝臓全体に散在していました。腰痛を訴えていたので骨を調べたところ腰椎に転移がみつかりました。
体力や肝機能が低下しており、手術も抗がん剤治療も効果が期待できないということでホスピスを紹介されました。しかし、何も治療しないというのは希望がないので漢方薬サリドマイドCOX-2阻害剤を併用した治療を希望してきました。
漢方薬としては肝臓の解毒能を高めるウコン・莪朮、血液循環を良好にして肝機能を改善する丹参・田七人参、抗がん活性を持った半枝蓮・白花蛇舌草・龍葵、食欲や免疫力を高める白朮・茯苓・甘草などを組み合わせて処方しました。
さらにサリドマイドCOX-2阻害剤のセレブレックスを併用して治療を行ったところ、2週間くらいで食欲が出てきて、倦怠感も無くなってきました。さらに2ヶ月後には肝臓がんの腫瘍マーカーであるアルファ・フェトプロテイン(AFP)が診断時の18000 ng/ml(正常は10 ng/ml以下)から8600 ng/mlと半分以下になり、上腹部に触れていた腫瘍による硬いしこりが柔らかくなって触知しにくくなりました。

肝臓に肝炎ウイルスが感染して炎症を引き起こす病気がウイルス性肝炎です。肝炎が長く持続(慢性化という)している状態を慢性肝炎と言い、慢性肝炎の結果、肝臓のコラーゲン線維が多くなり硬くなった状態が肝硬変です。
肝硬変では有害物質や老廃物を処理する解毒力が低下し、蛋白質の合成能力が低下して栄養状態も悪化していきます。このような肝臓機能の低下は、肝臓の線維化によって血液循環が悪くなることが重要な原因となっています。したがって、肝臓の血液やリンパの流れを良くするだけでも肝機能や解毒機能を高める効果があります。

ウコン、莪朮、丹参、田七人参のような生薬は肝臓の血液循環や解毒機能を改善します。がんを合併している場合には抗がん活性を持った半枝蓮・白花蛇舌草・龍葵のような生薬を追加するとがんを小さくすることも可能です。

TNF-αの合成を阻害するサリドマイドには進行がんでみられる悪液質を改善する効果があり、食欲不振や倦怠感を取り除く効果があります。また、肝臓がんは血管が豊富なのでサリドマイドの血管新生阻害作用は肝臓がんの発育を抑える効果が期待できます。
またCOX-2の過剰発現は肝臓がん患者でも示されています。特に、肝硬変の肝臓組織と高分化型の肝臓がんにおいてCOX-2の発現が高いことが報告されています。したがって、COX-2阻害剤を併用すれば抗腫瘍効果が高まる可能性があります。