ミトコンドリアを活性化するとがん細胞は自滅する

細胞が生存し活動するためのエネルギーとしてアデノシン3リン酸(ATP)という体内物質が使われます。ATPはアデノシンという物質に化学エネルギー物質のリン酸が3個結合したもので、生物が必要とする活動エネルギーを保存した「エネルギー通貨」のような分子です。
このATPは正常細胞では主にミトコンドリアという細胞内小器官で生成されています。ミトコンドリアでは、酸素を使って効率的にATPが作られます。ミトコンドリアで酸素を使ってATPを産生する方法は酸素呼吸あるいは酸化的リン酸化と呼ばれます。
一方、がん細胞ではミトコンドリアでのATP産生が抑制されています。がん細胞では酸素を使わないでブドウ糖(グルコース)からATPを産生する「解糖」という代謝系が亢進しています。解糖は細胞質で行われます。
ミトコンドリアにおける酸素呼吸では1分子のブドウ糖から32分子のATPが生成されますが、解糖系だけでは1分子のブドウ糖から2分子のATPしか生成されません。そのため、がん細胞は正常細胞に比べてブドウ糖の取込みを増やすことによってATP産生を補っています。その結果、がん組織では解糖系の最終代謝産物の乳酸が大量に産生されています。
がん細胞では、酸素が十分に利用できる状況でもミトコンドリアでの酸素呼吸が抑制され、ブドウ糖の取込みと解糖系が亢進し、乳酸の生成が増えているという現象は、90年以上前にドイツの生化学者オットー・ワールブルグ博士によって発見されました。
がん細胞がミトコンドリアでの酸素呼吸を抑制する理由が幾つかあります。
一つは、細胞構成成分を合成する材料として多量のブドウ糖が必要になっているためです。細胞が分裂して数を増やすためには核酸や細胞膜やタンパク質などの細胞構成成分を新たに作る必要があります。細胞は、解糖系やその経路から派生する様々な細胞内代謝経路によってブドウ糖から核酸や脂質やアミノ酸を作ることができます。ミトコンドリアで酸素を使ってブドウ糖を全てATP産生に使うと細胞を作る材料が無くなるのです。
また、ミトコンドリアでの酸素呼吸は活性酸素の産生を増やします。活性酸素は細胞にダメージを与え、増殖や転移を抑制し、細胞死を引き起こす原因になります。がん細胞は活性酸素の産生を増やさないように、ミトコンドリアでの酸素の利用を抑制していると考えられています。がん細胞にとっては、ミトコンドリアでの酸素を使った代謝を抑えておく方が生存や増殖に都合が良いのです。
そこで、がん細胞のミトコンドリアの活性を高めるとどうなるでしょうか。正常細胞ではミトコンドリアを活性化すると、ATP産生が促進され細胞の働きを高めることができます。しかし、がん細胞の場合は、増殖や転移が抑制され、細胞死が引き起こされることが分かったのです。  
それは、ブドウ糖が完全に分解されると細胞を増やすための材料が足りなくなり、酸素呼吸の亢進は活性酸素の産生を増やし、活性酸素によるダメージでがん細胞が自滅するからです。
つまり、細胞のミトコンドリアを活性化する治療法は、正常細胞の働きを高めながら、がん細胞だけを死滅できます。本書はその理由を解説し、この治療法を実践するための具体的な方法を解説することを目的にしています。がん克服の有効な手段であることを、多くのがん患者さんに知っていただきたいと願っています。

目次


第1章:ミトコンドリアを増やすとがん細胞は大人しくなる
【細胞を働かせるエネルギーとしてATPが使われる】
【ミトコンドリアはATPを産生する細胞小器官】
【細胞はブドウ糖を燃焼してエネルギーを産生する】
【ミトコンドリアは増やすことができる】
【ミトコンドリアを増やすとがん細胞の増殖や浸潤が抑制される】

第2章:ミトコンドリアの異常ががん細胞を発生する
【がんは身内の反乱】
【細胞のがん化は遺伝子異常だけでは説明できない】
【がん細胞はミトコンドリアの機能が低下している】
【正常なミトコンドリアは腫瘍形成能を抑制する】
【ミトコンドリアの酸化的リン酸化を阻害すると細胞ががん化する】
【ミトコンドリアでの酸化的代謝が増殖と転移を抑制する】
【がん細胞が転移する過程で活性酸素の産生が増える】

第3章:がん細胞はミトコンドリアでのATP産生を抑制している
【酸素が無いとピルビン酸は乳酸に変換される】
【がん細胞はミトコンドリアでの酸化的リン酸化が抑制されている】
【がん細胞では酸素があっても解糖系が亢進している】
【がん細胞はグルコースの取込みが亢進している】
【ワールブルグ効果はがん細胞の生存と増殖を助ける】
【ミトコンドリアは生存と細胞死の両方を制御している】 

第4章:がん細胞は活性酸素の発生量が増えると死滅する
【酸素呼吸で体内に活性酸素が発生する】

【細胞には活性酸素のダメージを防ぐ防御機能が存在する】
【活性酸素は細胞成分を酸化して老化や病気の原因になる】

【酸化ストレスを高めるとがん細胞を死滅できる】
【がん細胞に選択的に酸化ストレスを高めることができる】
【がん細胞のミトコンドリアは活性酸素がでやすい】

第5章:解糖系を阻害して酸化的リン酸化を活性化するとがん細胞は死滅する
【がん細胞は解糖系が亢進し酸化的リン酸化が抑制されている】

【ブドウ糖の取込みが多いがん細胞は増殖活性が高い】
【2-デオキシ-D-グルコースは解糖系を阻害する】
【2-デオキシ-D-グルコースは抗がん剤治療や放射線治療の効き目を高める】
【がん細胞のミトコンドリアを活性化すると活性酸素によって死滅する】
【がん細胞ではピルビン酸脱水素酵素キナーゼの活性が亢進している】

【ジクロロ酢酸ナトリウムはピルビン酸脱水素酵素キナーゼを阻害する】
【ジクロロ酢酸ナトリウムはHIF-1の活性を抑制する】

第6章:活性酸素の産生を高めるメトホルミンとレスベラトロール
【がん細胞の酸化ストレスを高めると死滅しやすくなる】
【電子伝達系(呼吸鎖)からの漏れが活性酸素種の量を高めている】
【植物のミトコンドリア毒ががん治療に利用できる】
【メトホルミンはミトコンドリアの呼吸酵素複合体Iを阻害する】
【レスベラトロールは呼吸酵素複合体-IとATP合成酵素を阻害する】

第7章:ワールブルグ効果を是正するケトン食
【絶食すると体脂肪が燃焼してエネルギーが産生される】
【ブドウ糖が枯渇した状況で脂肪酸が燃焼するとケトン体が産生される】
【血液中のケトン体が増えた状態をケトーシス(ケトン症)と言う】
【長期間の絶食ではケトン体は6~8mMくらいに上昇する】
【ケトン体は絶食時の脳のエネルギー源となる】
【ケトン体の健康作用が注目されている】
【ケトン食は絶食療法と同じ効果がある】 
【ケトン体のβヒドロキシ酪酸はミトコンドリアを活性化する】
【βヒドロキシ酪酸はグルコースとグルタミンの利用を抑制する】


第8章:抗酸化システムを阻害すると酸化ストレスが増強する
【オーラノフィンはチオレドキシン還元酵素を阻害する】
【ジスルフィラムはアルデヒド脱水素酵素を阻害する】
【ジスルフィラムはがん細胞の酸化ストレスを高める】
【オーラノフィンとジスルフィラムの相乗効果】

第9章:酸化ストレスを徹底的に高めればがん細胞は自滅する
【ジェームズ・ワトソンが提唱するがん治療】
【中途半端では逆効果になる】
【グルコースの取り込みと嫌気性解糖系を阻害するシリマリン】
【がん細胞の酸化ストレスを高めるアルテスネイト】
【高濃度ビタミンC点滴はがん細胞の酸化ストレスを高めてがん細胞を死滅させる】
【解糖系と酸化的リン酸化を阻害する半枝蓮】
【がん細胞の酸化ストレスを徹底的に高める方法:まとめ】

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