東京銀座クリニック
 
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●血管新生阻害によるがん治療

【がん組織が大きくなるには血管の新生が必要】

○ がんが大きくなるためには、栄養や酸素を運ぶ血管を増やしていく必要があります。新しい血管が増生することを「血管新生」と呼び、がん細胞は自ら血管を増やす増殖因子を分泌して血管を新生しています。
○ がん細胞が腫瘍血管を新しく作るために、1)がん細胞は血管内皮細胞増殖因子という蛋白質を分泌して、近くの血管の内皮細胞の増殖を刺激して、2)さらに周囲の結合組織を分解する酵素を出して増殖した血管内皮細胞をがん組織の方へ導き、3)血管の内腔を形成する因子を使って新しい血管を作っています。
○ これらのステップのいずれかを阻害してやると血管新生を阻止できます。
○ がん細胞が100個くらいになると、それ以上大きくなるためにはがん組織専用の血管が必要になって、がん細胞が血管を新生するための増殖因子を産生しだすといわれています。したがって、腫瘍の血管新生を阻害する薬を早期から使用すれば、残ったがん細胞の増殖を抑制して再発を防ぐことになります。がんが大きい場合もで、がん細胞を殺す抗がん剤治療などと併用すれば、抗腫瘍効果を高めることができます。 (下図)

図:がん細胞の塊であるがん組織が増大するためには、血管の新生が必要。そのために、腫瘍組織から血管新生を促進する増殖因子が分泌されている。腫瘍血管が増えるとがん細胞の増殖と転移が促進される。

【生理的な血管新生と病的な血管新生】

健常な成人においては、体の中で血管が新生する必要はありません。
○ 人体において血管が新生されるのは、
妊娠初期(胎盤形成や胎児の発生過程)炎症部位(慢性関節リュウマチ、糖尿病性網膜症、乾癬など)創傷治癒過程(手術後やケガ)虚血部位周囲での側副血行路の形成(心筋梗塞や閉塞性動脈硬化症など)がん組織が上げられます。
○ したがって、血管新生阻害作用を持つ物質は、炎症性疾患や腫瘍に対して治療効果を持つ反面、胎児の発育や創傷治癒や障害し、虚血性疾患を悪化させるという副作用を有します。

生理的な血管新生
病的な血管新生
○ 妊娠初期(胎盤形成や胎児の発生過程)
○ 創傷治癒過程(手術後やケガ)
○ 虚血部位周囲での側副血行路の形成
(心筋梗塞や閉塞性動脈硬化症など)
○ 炎症部位(慢性関節リュウマチ、糖尿病性網膜症、乾癬など)
○ がん組織

【血管新生阻害作用のある医薬品やサプリメント】

1)サリドマイド:

○ 腫瘍血管の新生を促進するVascular Endothelial Growth Factor(VEGF,血管内皮増殖因子)Tumor Necrosis Factor-α(TNF-α,腫瘍壊死因子アルファ)Interleukin(IL)-8の産生や活性を抑えます。シクロオキシゲナーゼ-2の発現を抑えることによって、血管新生を刺激するプロスタグランジンの産生を抑えます。
○ 血管新生阻害作用以外にも、がん細胞のアポトーシス抵抗性を減弱させ、 T細胞受容体を介したT細胞の反応性を高め、T細胞の増殖を刺激し、IL-2とインターフェロン-γの産生を促進し、ナチュラルキラー細胞の数を増加させる効果など様々な抗腫瘍効果を有します。
○ TNF-αの産生を抑えることによって、TNF-αの刺激で血管壁に発現する接着因子のintracellular adhesion molecule-1 (ICAM-1)、vascular-cell adhesion molecule-1 (V-CAM-1)、E-selectinの産生を抑えることによってがん細胞の転移を抑制する効果も期待できます。
(サリドマイドの詳細はこちらへ)

2)COX-2阻害剤(celecoxibなど):

シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)は炎症性細胞内に存在してプロスタグランジンを合成する酵素として知られていますが、多くのがん細胞にも存在して、増殖や転移や血管新生を促進する作用が知られています。したがって、この酵素を阻害することにより、血管新生を阻害するだけでなく、がん細胞の増殖や転移を防ぐ効果も期待できます。
○ 選択的COX-2阻害剤の中で、
celecoxib(商品名:セレコックスなど)は、COX-2阻害だけでなく、COX-2阻害作用に依存しない血管新生阻害作用や、がん細胞を直接殺す作用や、抗がん剤の効果を高める効果も報告されています。
セレコックスの詳細はこちらへ

図:がん組織にはがん細胞や炎症細胞が存在し、がん組織から炎症性サイトカインやフリーラジカルが産生され、転写因子のNF-κBが活性化される。NF-κBによってIL-8やシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の転写が亢進し、COX-2からはプロスタグランジンE2が産生される。これらの因子は腫瘍血管の新生やがん細胞の増殖を促進し、抗腫瘍免疫を抑制する。その結果、がんは悪化する。

3)アルテミシニン誘導体:

アルテミシニン(artemisinin)はマラリアの治療に古くから使用されていた青蒿(セイコウ)という生薬から抽出された解熱成分で、現在ではアルテミシニンとその誘導体(アルテスネイトなど)はマラリアの特効薬として使用されています。近年、このアルテミシニン誘導体が抗がん物質として注目を集めています。
○ アルテミシニン誘導体は分子の中に鉄イオンと反応してフリーラジカルを産生するendoperoxide bridge を持っています。がん細胞はトランスフェリンレセプターを介したメカニズムで鉄を多く取り込んでいます。がん細胞内には鉄イオンが多く含まれ、アルテミシニンやアルテスネイトは鉄イオンと反応してフリーラジカルを発生するため、がん細胞が選択的に障害を受けることになります。
○ アルテミシニン誘導体には、血管新生阻害作用も報告されています。
アルテミシニン誘導体の詳細はこちらへ

図:アルテスネイトはがん細胞に多く存在する鉄イオンと反応してフリーラジカルを産生してがん細胞を死滅させる。正常細胞は鉄の含有量が少ないので、アルテスネイトによる毒性は受けない。アルテスネイトは血管新生阻害作用もある。これらの作用によってアルテスネイトは副作用が少なく、がんの増大を抑制する。

4)その他

メベンダゾール:
がん治療以外の目的で開発された何千種類という既存の薬から、抗がん作用を有する物質が探索され、駆虫薬として広く使用されているメベンダゾールという薬が強い抗がん作用を持つことが明らかになっています。この薬は副作用が極めて少なく、安全性が確立されており、臨床例での有効性も報告されています。血管新生に最も大きく関与しているVEGFR-2のチロシンキナーゼ活性を阻害する作用がメベンダゾールに指摘されています。
メベンダゾールについkてはこちら

DHA(ドコサヘキサエン酸)などのω-3多価不飽和脂肪酸:
シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)によるプロスタグランジンE2の合成を阻害するので、癌細胞の増殖抑制や血管新生阻害作用が期待できます。
DHAの抗がん作用については こちら

血管新生阻害の治療は、再発リスクの高いがんの治療後や、抗がん剤治療中の抗腫瘍効果増強の目的で極めて有効です。
治療についてのご質問などは電話(03-5550-3552)かメール(info@f-gtc.or.jp)でお問い合わせください。

 


 
 
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