COX-2阻害剤のcelecoxibとω3不飽和脂肪酸(DHA)を併用したがん治療
○ COX-2阻害剤celecoxibの抗がん作用:

シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)は炎症性細胞内に存在してプロスタグランジンを合成する酵素として知られていますが、多くの癌細胞にも存在して、増殖や転移や血管新生を促進する作用が知られています。したがって、がん治療においてはCOX-2の働きを阻害することは多くのメリットがあると考えられています。
選択的COX-2阻害剤のcelecoxib(商品名:セレブレックス、Cobix)は、多くのがん細胞の増殖や転移を抑え、抗がん剤の効果を増強する作用が報告されています。celecoxibには、COX-2阻害作用だけでなく、COX-2阻害作用に依存しない血管新生阻害作用や、がん細胞を直接殺す作用や、抗がん剤の効果を高める効果も報告されています。しかし、長期間に渡って大量のCOX-2阻害剤を服用すると心臓や消化管などへの副作用も懸念されています。
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○ ω3不飽和脂肪酸の抗がん作用:

脂肪酸はその種類によってがん細胞に対する影響が異なり、リノール酸やγ-リノレン酸やアラキドン酸のようなω6系不飽和脂肪酸はがん細胞の増殖を促進し、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)やα-リノレン酸などのω3系不飽和脂肪酸はがん細胞の増殖を抑制する効果が指摘されています。  
魚油に含まれるDHAががんの予防や治療の効果を高めることは、多くの臨床的研究や実験的研究で明らかになっています。毎日魚を食べている人は、そうでない人に比べ大腸がんや乳がんや前立腺がんなど欧米型のがんになりにくいという研究結果や、EPAやDHAによる前立腺がんのリスク低下などが報告されています。
DHAががん細胞の増殖速度を抑制し、腫瘍血管新生を阻害し、がん細胞に細胞死(アポトーシス)を引き起こすことなどが多くのがん細胞で示されており、抗がん剤の効果を増強し副作用を軽減する効果も報告されています。
食事から摂取された脂肪酸は細胞膜に取り込まれて細胞の増殖などの機能に影響します。ω3脂肪酸を多く摂取してω6脂肪酸を少なくして、ω6脂肪酸:ω3脂肪酸の比を小さくすれば、がんの予防や、癌細胞の増殖抑制につながることが期待できます。
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○ celecoxibとDHAは相乗効果によって抗がん作用が高まる:

COX-2阻害剤のcelecoxibの抗腫瘍効果は、ω3不飽和脂肪酸のDHAやEPAと併用することによって増強されることが、最近の研究で明らかになっています。
celecoxibとDHAはともにCOX-2の活性を抑えるだけでなく、COX-2阻害作用とは別のメカニズムでも、がん細胞の増殖や転移を抑えたり、血管新生阻害作用を発揮することが報告されています。celecoxibとDHA.EPAの併用療法は、がんの補完・代替医療として試してみる価値があります。


○ 服用量について:

celecoxibとDHA/EPAは共に副作用は少なく、抗がん剤のような正常細胞にダメージを与えるようなデメリットはありません。ただし、服用量が多くなると血小板凝集を抑えるため、血液が固まりにくくなります。したがって、手術の前や、血小板が減少する可能性のある抗がん剤治療中には、十分な注意が必要です。

服用量に関しては、
1)がんの再発予防の目的では、celecoxib 1日100〜200 mg、DHA/EPAサプリメントは1日1〜2グラムが、副作用が問題にならず長期に服用しても問題の無い量として推奨されます。

2)進行がんの代替医療の目的では、celecoxibは1日200〜400 mg、DHA/EPAサプリメントは1日4〜6グラムの大量を服用します。ただし、手術や抗がん剤治療と併用する場合には、治療の状況に応じて量を減らします。

○ 食事からω3不飽和脂肪酸を多く摂取する方法:

ω6脂肪酸は肉だけでなく野菜にも含まれます。したがって、一般的な食事ではω6脂肪酸が優位です。
アメリカ人の食事はω6:ω3の比が10〜20になると報告されています。一方、伝統的な日本食(大豆と魚の豊富な食事)ではその比は1〜2.8にあると言われています。
旧石器時代の祖先ではω6:ω3の比は1〜5と言われています。
FAO/WHOはω6:ω3の比は5〜10を推奨しています。
この比を低くするには、意識してω3不飽和脂肪酸の多い魚やシソ油、亜麻仁油の摂取が必要です。DHAやEPAは酸化されやすいので、品質の確かなサプリメントを利用する方が良いかもしれません。

標準的なアメリカ人はEPAとDHAの摂取は1日100mg程度と言われています。食事やサプリメントから1日500〜 1000mgの摂取が必要だと言われています。
がんの治療の場合には、ω6:ω3の比を1以下にすると抗腫瘍効果が期待できます。
がんに良い食事の場合、脂肪は全カロリーの10〜15%が目安になります。1日2000カロリーとすると、200〜300カロリー分の脂肪は約22〜33グラムになります。その半分の約10数グラムくらいのω3脂肪酸を摂取することを目標に、肉類は極力控え、野菜はバランス良く摂取し、魚と多く食べ、DHA/EPAのサプリメントを1日数グラム摂取すれば、ω6とω3の比を1以下にできます。
極端にω3脂肪酸を多くとると、血液が固まりにくくなるなどの副作用が出ますので、この点に注意しながら、ω3不飽和脂肪酸をω6より多くなるようにすれば、がん細胞の膜に変化が起こって、がん細胞がおとなしくなる可能性があり、試してみる価値のあるがんの食事療法だと思います。

ω6/ω3比を1以下にする食事療法
1)肉は食べない。動物性脂肪はω6脂肪酸が多い。
2)野菜や果物や大豆食品(豆腐、納豆、味噌)は多く食べる。ただし、野菜にはリノール酸などのω6脂肪酸が多いので、ω3不飽和脂肪酸のα-リノレン酸の豊富なシソ油か亜麻仁油をドレッシングとして使用する。シソ油や亜麻仁油は熱を加えない。油で炒めるときはオリーブオイルを使用する。
3)背の青い魚(マグロ、サバ、ブリ、サンマ、イワシ)の刺身を食べる。
揚げ物や焼き魚は避ける。生(刺身)か煮付けで食べる。
4)サプリメントで、DHA+EPAを1日4g程度摂取する。

銀座東京クリニックでは、高品質・高含量のDHA+EPAを安く提供しています。
DHA総量25g、EPA総量5.4gで3500円です。DHA+EPAを1日4g摂取して、1ヶ月分が14,000円になります。
シソ油や亜麻仁油は食料品店で購入できます。1日10グラム摂取しても1ヶ月2000円程度です。
がんが存在する場合には、この食事療法にCOX-2阻害剤のセレブレックスを1日200mg程度の低用量を併用します。セレブレックスは1ヶ月で12,000円になります。

がん細胞をおとなしくさせるという目標で、がん細胞の細胞膜にω3不飽和脂肪酸を多く取り込ませ、少量のセレブレックスを併用すると、がん細胞の増殖活性は低下し、抗がん剤治療が効きやすくなりますので、試してみる価値はあると思います。

以下のページも参考にして下さい:

○悪性線維性組織球腫という肉腫の患者さんが、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といったω3不飽和脂肪酸を多く摂取する食餌療法で、腫瘍が縮小したという症例が報告されています。(詳細はこちらへ

○ω3不飽和脂肪酸と抗酸化剤の併用は抗がん剤の治療効果を高める。(詳細はこちらへ

 
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