コーヒーの肝臓がん予防効果
コーヒーを飲んでいる人は肝臓がんの死亡率が低いという疫学的研究結果が、日本やヨーロッパの研究グループから報告されています。
いくつかの研究でコーヒー摂取と肝臓がん発症リスクとの逆相関が示唆されていることから,両者の関連について検討した10件の研究(肝臓がん患者2,260例)のメタ解析を行った結果がイタリアの研究グループから報告されています。メタ解析(メタ・アナリシス)とは、複数の同じテーマの研究結果のデータを統合して統計的に分析する研究手法です。ひとつ一つの臨床研究では症例数が少なくて統計的な精度や検出力が不十分であったり、研究間で結果が異なるなど、明確な結論が得られないことがあります。これを解決するために、過去に行われたランダム化比較試験の中から信頼できるものを全て選び、統計的に総合評価を行うことによって、その治療法の有効性を評価する方法がメタ・アナリシスです。EBMの考え方ではメタ・アナリシスの結果がもっとも強い証拠とされています。

この研究では、南欧と日本で行われた症例対照研究 6 件(肝臓がん1,551例)と日本で行われたコホート研究 4 件(肝臓がん709例)が含まれています。
解析の結果,
コーヒーを飲まない群と比べて多く飲用している群では肝臓がん発症リスクが全体で41%低下していました(症例対照研究では46%,コホート研究では36%の低下)。全体としてコーヒーの摂取量別の肝臓がんリスクの低下は,少量〜中等量飲用群が30%,大量飲用群が55%でした。また,1 日のコーヒー摂取が1 杯増えることにより全体で23%のリスク低下が認められました(症例対照研究では23%,コホート研究では25%の低下)。さらに,コーヒーの摂取は他の肝疾患のリスク低下とも関係していました。

この結果はコーヒーの肝機能への好ましい効果を示唆するものですが,肝疾患のある人はコーヒーの摂取を控える可能性や、negative dataは発表されない傾向にあるという出版バイアスも考えられますので、前向きの比較対象試験で効果が証明されるまではまだ最終結論は出せないかもしれません。

(出典:Bravi F, et al. Coffee drinking and hepatocellular carcinoma risk: a meta-analysis. Hepatology 2007 46: 430-435.)


米国からは、
カフェインを含まないコーヒーを1日2杯以上飲んでいる人は直腸がんの発生が少ないというデータも報告されています。

岐阜大学医学部病理学教室の森教授の研究グループは、
コーヒーには大腸がんや肝臓がんの発生を抑える効果があることを、ネズミを使った実験で示しています発がん予防効果のメカニズムとして、コーヒーに含まれるクロロゲン酸などのポリフェノール類による抗酸化作用が指摘されています

コーヒーには抗酸化作用の強いポリフェノールやメラノイジンが豊富に含まれています。野菜や果物から抗酸化物質を多く摂取していると一般的に考えられていますが、米国人は他の食品よりもコーヒーから抗酸化物質を多く摂取しているという報告もあります

昔は、コーヒーはがんを促進するといわれたこともありましたが、コーヒーを飲んでも、がんに悪いことはなさそうです。ただし、
砂糖の過剰な摂取はがんを促進するという報告もありますので、砂糖は控えめの方が良いと思います。

   
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