ω3不飽和脂肪酸を多く摂取すると前立腺がんの増殖を抑えることができる 

魚の油に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)エイコサペンタエン酸(EPA)が前立腺癌をはじめとして様々ながん細胞の増殖を抑えることはこのサイトの他のページでも解説しています。ここでは、食事中のω3不飽和脂肪酸を増やすと前立腺癌の増殖を抑えることができること動物実験で示した論文を紹介します。

Effect of altering dietary omega-6/omega-3 fatty acid ratios on prostate cancer membrane composition, cyclooxygenase-2, and prostaglandin E2.(前立腺癌細胞の細胞膜の構成、シクロオキシゲナーゼ-2、プロスタグランジンE2に対する食事中のω6/ω3脂肪酸の比の影響)Clin Cancer Res. 12:4662-4670. 2006

米国カリフォルニア大学医学部の泌尿器科のAronson教授の研究グループからの報告です。
アンドロゲン依存性の前立腺癌細胞を移植したマウスに、食餌中の脂肪の全てがω6不飽和脂肪酸の食餌を与えたグループ(A群)と、ω6とω3の不飽和脂肪酸が等量になる食餌を与えたグループ(B群)で、移植した前立腺癌細胞の増殖速度やがん細胞の細胞膜の脂肪酸組成、腫瘍組織のシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)活性とプロスタグランジンE2(PGE2)量などを比較検討しています。

その結果、ω3不飽和脂肪酸を含む食餌を摂取させたB群のマウスは、ω6不飽和脂肪酸のみのA群のマウスと比べて、前立腺がん細胞の増殖速度が遅く、細胞死(アポトーシス)の頻度は高いという結果が得られました。
マウスの血清を培養している前立腺癌細胞の培養液に添加すると、A群のマウスの血清を添加した場合と比べ、B群のマウスの血清を添加した前立腺癌の増殖は22%低下しました。B群のマウスの血清およびがん細胞の細胞膜は、A群のそれに比べて、ω6/ω3不飽和脂肪酸の比が有意に低下していました。 

さらに、ω6不飽和脂肪酸のみのA群に比べて、ω3不飽和脂肪酸を多く摂取したB群のマウスのがん組織のCOX-2蛋白とCOX-2mRNAのレベルは低下し、PGE2レベルは83%の減少を認め、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のレベルも低下していました。
以上の結果は、食事中のω6不飽和脂肪酸を減らし、ω3不飽和脂肪酸を増やして、ω6/ω3の比率を低下させることは、前立腺癌の治療に役立つことを意味しています。

(注)
ω6不飽和脂肪酸はコーン油、サフラワー油、赤身肉に多く含まれ、欧米食の多価不飽和脂肪酸のほとんどを占めています。一方、DHAやEPAのようなω3不飽和脂肪酸はサケ、マグロ、イワシなど魚類に多く含まれています。
米国ではコーン油摂取量が多く、食事からのω6不飽和脂肪酸摂取量はω3不飽和脂肪酸の20倍以上に達していると言われています。
ω6/ω3不飽和脂肪酸の比率を低下させると、がん細胞のCOX-2活性が低下し、PGE2の減少などによって、増殖活性が低下し、アポトーシスを起こしやすくなると考えられています。
ω6/ω3不飽和脂肪酸の比率を低下させることが、人間の前立腺癌にどの程度の効果が期待できるかは、ヒトを対象とした臨床試験の結果を待たなければなりませんが、多くの基礎研究や疫学的研究から、ω3不飽和脂肪酸を多く摂取することは前立腺癌の予防や治療に有効であると考えられています。

DHA(ドコサヘキサンエン酸)の抗がん作用についてはこちらへ
https://www.1ginzaclinic.com/DHA/DHA.html

DHA/EPAのサプリメントについてはこちらへ
https://www.1ginzaclinic.com/DHA/dha-epa.html

COX-2阻害剤のセレブレックスとDHAを併用すると前立腺癌細胞の増殖を抑える効果が期待できます。
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魚油(DHA)はがん性悪液質を改善します
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