Ukrainの抗がん作用に関する臨床試験 

2005年7月のBMC Cancer という雑誌に「Ukrain - a new cancer cure? A systematic review of randomised clinical trials.(Ukrainは新しい癌治療法か?ランダム化臨床試験の総合的評価)」という英国からの論文が発表されています。
この論文では、今まで報告されたUkrainを使った7つのランダム化臨床試験を厳格な基準で評価し、「厳密なランダム化」という点での問題点も指摘していますが、Ukrainの臨床効果が期待できるものであることを認め、さらに厳密な臨床試験の実施を提案しています。

UKRAIN は植物のChelidonium majus L. (クサノオウ) から抽出したアルカロイド成分と、抗癌剤として使用されているThiotepa(チオテパ)を化学的に結合させて合成した薬剤です。
昔のソビエト連邦においてがん治療薬として認可されていましたが、ソ連崩壊後は、主にヨーロッパを中心にがんの代替医療に使用されています。その抗がん作用については20年以上前から研究が行われており、培養細胞を使った実験や動物実験では、非常に優れた抗腫瘍効果が数多く報告されています。
UKRAINには次のような特徴があります:
1)治療に使用する用量において、癌細胞には毒作用を発揮するが、正常細胞に対しては毒作用を示さない。
2)注射にて投与すると、すみやかに腫瘍組織に蓄積する。
3)血管新生阻害作用があり、腫瘍を限局化することによって、手術の可能性が高まる。
4)免疫システムを活性化する。

人間における有効性を示す症例報告や臨床試験も数多く発表されています。
標準的治療で効果が見られなくなった種々の進行がん患者203例に対して、ドイツのVilla Medical ClinicにおいてUkrainを使った治療の結果が以下の論文に報告されています。

進行癌203例におけるUkrain治療の臨床経験
Retrospective study of Ukrain treatment in 203 patients with advanced-stage tumors.
Drugs Exp Clin Res. 2000;26(5-6):249-252. 

この報告によると、標準的治療が無効の患者における治療成績という点において、Ukrainを用いた治療結果は驚くべきものであったと記載されています。
41例(20.2%)は腫瘍の完全な消失(total remission)がみられ、, 122 例(60.1%) では部分的な腫瘍縮小(partial remission)を認め、治療に反応しなかったのは40例 (19.7%) でした。
もっとも効果が見られたのは精巣腫瘍(seminoma)であり、4例中3例で腫瘍の消滅(toral remission)、残り1例は部分的な縮小(partial remission)がみられました。また、前立腺がん患者では20例中14例(70%)で完全消滅(total remission)し、5例で部分的縮小(partial remission)が見られました。