東京銀座クリニック
 
ホーム 院長紹介 診察のご案内 診療方針 書籍案内 お問い合わせ

概要:
硫酸ヒドラジン(Hydrazine sulphate) はがんの代替医療として1960年代から検討されています。
硫酸ヒドラジンの抗腫瘍活性は動物実験などで示唆されていますが、ヒトでの抗腫瘍効果については賛否両論があり結論は出ていません。
しかし、がん患者における食欲不振や体力の消耗などの原因である がん性悪液質 (カヘキシー)を改善する効果が示唆されています。
そのメカニズムとして、がん細胞が増殖するために必要なエネルギーの元であるグルコースの利用を硫酸ヒドラジンが妨げるという作用、また硫酸ヒドラジンがTNF-αの働きを阻害する作用などが報告されています。
硫酸ヒドラジンの服用により末期がんの約半数において、体重増加、食欲の回復、疼痛の軽減、生存期間の延長などの効果がみられたという報告もあります。腫瘍の安定化や縮小も期待でき、他のがん治療の効果を高めることが期待できます。
硫酸ヒドラジンは栄養補助食品として米国で販売されていますので、服用に伴う危険性(副作用)は低いと考えられますが、FDA(米国食品医薬品局)は硫酸ヒドラジンをがん治療薬として使用することは認めていませんし、がんの代替医療としてヒトでの有用性はまだ結論が出ていません。
したがって、がん治療に使用する場合には、自己責任のもとで服用することが条件になります。
しかし、悪液質の改善やがん細胞の増殖抑制や延命効果を期待して、がんの代替医療として試してみる価値はありそうです。
硫酸ヒドラジンはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(phosphoenolpyruvate carboxykinase)という酵素を阻害します。この酵素は、TCA回路のオキサロ酢酸を脱炭酸してホスホエノールピルビン酸を合成する酵素で、解糖の逆反応を行い糖新生に関与します。
最近の研究で、がん細胞のホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ活性を阻害すると、がん細胞の増殖に必要な物質の合成を阻害して、増殖を阻害できることが明らかになっています。

歴史:
硫酸ヒドラジンはNH2NH2・H2SO4という化学構造で、ロケット燃料、殺虫剤、さび防止剤などに含まれる一般的な産業化学物質です。
この硫酸ヒドラジンががん患者の衰弱過程を抑制し、腫瘍の成長を阻害することができるということを、米国の ジョセフ・ゴ−ルド(Joseph Gold)博士 が1968年に報告しています。
ロシアの研究では、硫酸ヒドラジンの治療を受けた48人の末期がん患者のうち、35%に腫瘍の安定化あるいは縮小がみられ、59%に自覚症状の改善がみられています。
米国がん学会は硫酸ヒドラジンの有効性を疑問視し、米国では否定的な見解が主流を占めていましたが、がんの代替医療としての有用性を報告した研究や論文も多くみられ、硫酸ヒドラジン治療はがんの代替医療の分野ではいまだに使用されています。

抗腫瘍効果の根拠:
1. がん細胞が増殖するためには、がん細胞がグルコースを利用してエネルギーを産生する必要があります。がん細胞が必要なエネルギーを獲得するために、体の蛋白質を分解して糖を作って、それをエネルギー源として利用します。その結果、体重の減少や体力の消耗が起こります。
この 糖新生 過程に働く ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ という酵素を硫酸ヒドラジンは阻害することによって、がん患者における悪液質の発生を抑え、かつ癌細胞の増殖を阻止する効果が期待できることになります。

注:
がん細胞は正常な細胞よりも10倍以上も貪欲にグルコースを摂取します。がん細胞は、肝臓で乳酸から変換されたグルコースを主な糖質として利用しています。がん細胞がグルコースをエネルギー源として使うとき、グルコースを十分に燃焼されず、乳酸が老廃物として蓄積します。この乳酸は肝臓でもう一度グルコースに変換され、そのグルコースがまたがん細胞に利用されて、がん細胞は多量な糖質をどんどん消費していきます。その結果、悪循環が成立してしまいます。
つまり、がん細胞が活発に成長している間、正常な細胞は飢えており、中にはがん細胞に栄養を与えるために分解していくものさえあります。このために、体が消耗し衰弱していくのです。
肝臓が乳酸をグルコースに変換する過程である 糖新生 を阻害すれば、この悪循環を断ち切ることができるとゴ−ルド博士は考えました。硫酸ヒドラジンは糖新生を阻害する効果があるため、がんの悪液質を改善する効果があるのです。

図:がん細胞はグルコースの解糖系での代謝が亢進し(赤矢印)、乳酸の産生が増えている。生成された乳酸は肝臓で糖新生によってグルコースに再生され、がん細胞や赤血球や筋肉で再びエネルギーとして使われる(コリ回路という)。1分子のグルコース当たり、解糖で2分子のATPが生成し、糖新生で6分子のATPが消費されるため、正味4分子のATPが減少している。この解糖と糖新生の亢進によるATPの消費(浪費)が、進行がんにおける倦怠感(エネルギー不足)や体重減少の原因の一つになっている。


2. がん性悪液質の発生には、 腫瘍壊死因子 -alfa(TNF-α) が関与する場合があります。TNF-αはカケクチンとしても知られ、がん患者ではTNF-αが多く産生されるために、体重の減少や食欲不振などが起こります。硫酸ヒドラジンはTNF-αの活性を抑制する効果が報告されています。この作用も、硫酸ヒドラジンががん性悪液質を改善する効果を発揮する理由となっています。
以上のように、硫酸ヒドラジンは、糖新生の阻害とTNF-αの産生阻害の両方の作用で悪液質を改善する効果が期待できるのです。

悪液質を改善すれば延命できる:
がんが大きくなって命を落とす主な理由は、栄養の悪化による衰弱、体力・抵抗力の低下による感染症、老廃物の蓄積による諸臓器機能の低下などが総合的に組み合わさって、最終的には生命力が低下するからです。がん組織の塊による直接的な影響よりも、がん性悪液質による体力・抵抗力の低下の方が、生存期間を決定する要因として重要なのです。
悪液質による体力の消耗や衰弱を抑制できれば延命することは可能です。
毒薬でがん細胞を攻撃する代わりに、体の衰弱を止めると言うのが、硫酸ヒドラジン療法なのです。
(その他の悪液質改善の方法は topics-10 でも解説しています)

投与法:
食事の前か食事中に30mgか60 mgを服用します。
最初の数日間は1日1回、そして1日2回、その後1日3回投与されます。
投与する期間や量は症状の変化による調整します。
抗がん剤や放射線療法と組み合せて使用することにより、これらの効果を高めることができます。

副作用:
適切に使用すれば高度な副作用はほとんど発生しません。
主な副作用は、吐気、めまい、皮膚のかゆみ、眠気などで、投与された人の5〜10%に発生します。しかし、そのような副作用は軽度で一過性のものがほとんどです。
長期にわたって多量に投与された場合、稀に手足の痛みやしびれを経験することがあります。このような時には、服用量を減らすことでコントロールできます。稀に肝障害の報告もあります。

医薬品と食品に関する注意:
麻薬、鎮静薬、トランキライザー(精神安定剤)、アルコ−ル、抗うつ薬を服用中の時は使用できません。
硫酸ヒドラジンは Monoamine oxidase阻害作用 がありますので、 チラミン(tyramine) を多く含む食品を取り過ぎると血圧上昇や動悸を引き起こすことがあります。
チラミンはモノアミンの一種で、交感神経細胞の神経終末からのノルアドレナリンの遊離を促進するため、血管収縮作用があり、血圧を上昇させ、心拍数を増やす作用があります。
チラミンはモノアミン酸化酵素(MAO)により不活化されますが、硫酸ヒドラジンは、MAO阻害作用を有し、チラミンの代謝を阻害するため、そのまま腸管から吸収され、アドレナリン作動性神経終末に取り込まれてノルアドレナリンの遊離を促進し、血圧上昇、発汗、動悸、頭痛等を起こすのです。
チラミンは、タンパク質が微生物に分解される時に作られます。これが発酵や醸造食品が含有量の多い理由です。 古くなった食品を避け、新鮮な食品を食べます。
チラミンを多く含む食品として以下のようなものがあります。硫酸ヒドラジンを服用中はこれらの食品をできるだけ食べないようにします。

  • 熟成したチーズ、ヨーグルト、サワークリーム
  • 発酵食品(味噌、醤油、納豆)
  • 酵母製品
  • 漬け物類
  • 薫製した魚や肉(サラミ、ソーセージ)
  • トリの肝臓
  • チョコレートやココアなどのカカオ製品、大量のコーヒー
  • バナナ、アボカド、イチジク、そら豆、レーズン、プラム
  • 赤ワイン、ビール 使用にあたっては、自分の判断で服用するのではなく、

服用にあたっては、硫酸ヒドラジンを使った治療に詳しい医師の指導のもとに行うのが賢明です

◎ 硫酸ヒドラジンの抗腫瘍作用の詳しいメカニズムはこちらへ

◎ 硫酸ヒドラジンを使用した治療についてはメール(info@f-gtc.or.jp)か電話(03-5550-3552)でお問合せ下さい。

 

 
| ホーム院長紹介診療のご案内診療方針書籍案内お問い合わせ
COPYRIGHT (c) GINZA TOKYO Clinic, All rights reserved.