Pemetrexed(Alimta, アリムタ)の使用法と副作用のまとめ

【作用機序】

葉酸が必要な酵素(thymidylate synthase, dihydrofolate reductase, glycinamide ribonucleotide formyltransferaseなど)の作用を阻害することによって核酸の合成を阻害し、細胞分裂を阻害します。
Pemetrexedは細胞内に取り込まれると、folylpolyglutamate synthetaseの作用でpolyglutamate formに変換され、細胞内に長く留まって抗腫瘍活性を発揮します。このため細胞内での半減期が長くなり、3週間に1回の投与で済みます。

【薬物代謝】

Pemetrexedは体内ではほとんど代謝されず、主に腎臓から尿中へ排泄されます。
したがって、腎機能低下や、腎臓の血流を低下させる非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)との併用は注意が必要です。
クレアチニンクリアランスが45 ml/min以下の場合は投与できませんが、肝機能障害があってもAlimtaの代謝には影響しません。

【他の抗がん剤との併用について】

○ 悪性中皮腫の場合は、シスプラチンとの併用が有効です。

○ 非小細胞性肺がんのsecond-line以降の治療では他の抗がん剤との併用はメリットがありません。 (一般的に、細胞毒性を持つ抗がん剤の併用は、second-lineの非小細胞性肺がんの治療としてはエビデンスがありません)

○ erlotinib(タルセバ)との併用も現時点では推奨できません。
Erlotinib(タルセバ)と細胞毒性をもつ抗がん剤の併用は、非小細胞性肺がんのfirst-lineの治療には有効ではないことが示されています(erlotinibに抗がん剤を併用しても上乗せ効果が無いこと)。
これはerlotinibによって癌細胞がG1 arrrestによって細胞周期が停止するので、細胞分裂依存性の抗がん剤の効果がでにくいからです。現在、erlotinibのパルス投与と、docetaxelやpemetrexedの併用が検討されています。これは、EGFR-TK阻害剤を間歇的に投与することによってTK阻害効果を分離して、抗がん剤の効き目を高めることができるかもしれないという仮説も基づきます。

【有効性と副作用について】

○ 非小細胞性肺がんのsecond-lineの治療としては、Docetaxel(タキソテール)の75 mg/m2 every 21 daysとほぼ同等かやや勝る有効性が示されています。
Response rate ; 9.1% vs 8.8%, Progression-free survival; 2.9 months for both, Median survivaltime; 8.3 months vs 7.9 months, 1 year survival: 30% for both
しかし、臨床試験で示されたアリムタの有効性はresponse rateに基づくものであり、延命効果や症状改善効果に対する有効性についてはまだ臨床試験の結果は出ていません。(ただし、docetacelは緩和治療単独よりも延命効果があることは臨床試験で証明されているので、このdocetaxelと同等以上の生存期間であるので、延命効果はあると考えられています)

○ 副作用として骨髄障害(貧血、白血球減少、血小板減少)、肝機能障害(GOT,GPT上昇)、倦怠感、発熱、浮腫、筋肉痛、関節痛、脱毛、食欲不振、吐き気、嘔吐、便秘、下痢、胃炎、呼吸困難、胸痛、神経障害、感染症、アレルギー反応、発疹などがあります。
骨髄抑制と脱毛はアリムタの方がタキソテールより軽いのですが、肝機能障害はアリムタの方が高い傾向にあります。
倦怠感、貧血、血小板減少、悪心、嘔吐、胃炎、下痢、発疹、浮腫は同等です。
ただし、アリムタの副作用はビタミンB12、葉酸の補充でかなり軽減でき、生存期間も延長します。(アリムタの投与の場合はビタミンB12、葉酸の補充は必須です)

○ 過剰投与の場合、高度の白血球減少や血小板減少、真菌症の場合は、leucovorinを使用します。
Leucovorin 100mg/m2, intravenously once, followed by leucovorin 50 mg//m2,
intraavenousely every 6 hours for 8 days

【投与法】

○ 1 vial(500mg pemetrexed)に20 mlの生理食塩水を加え、静かに震盪して完全に溶かし、25 mg/mlの濃度にします。 溶液は透明で、無色か、黄色から緑黄色を呈します。沈澱や塊や変色がないかをチェックし、もし沈澱や塊があれば使用しません。

○ 1回に投与する量をさらに生理食塩水で溶かして最終的に100 mlにし、これを10分以上かけてゆっくり静脈内投与します。通常、3週間に1回のペースで投与します。
調製されたAlimta液を冷蔵庫や室温で24時間までの保存は問題ありませんが、24時間以内に使用しないものは廃棄します。 

○ 希釈に使用するのは保存物質を含まない(preservative free)注射用生理食塩水のみを使用します。カルシウムを含むもの(リンゲル液など)は使用できません。他の薬剤や希釈液との検討は行なわれていないので推奨できません。
Alimtaは光線で影響は受けません(not light sensitive)

注意:Alimtaの調製や投与などの取り扱い時には、無菌的な注意と、手袋の使用が推奨されます。Alimta溶液が皮膚に付いた場合は、直ちに水と石鹸を用いて十分に洗浄します。粘膜に付着した場合は、水で完全に洗い流します。

【副作用軽減のための前処置】

Corticosteroid:発疹などアレルギー反応を抑えるため、Alimta投与の前日、当日、翌日の3日間、Corticosteroidの内服を行ないます。臨床試験では、dexamethasone 4 mgの1日2回の内服が、Alimta投与の前後1日を含めて3日間実施されました。
デカドロンを1日8 mg, 分2で、Alimta投与の前日、当日、翌日に服用する) 
  
Folic acidAlimta治療中は低用量の葉酸を含むサプリメントを毎日摂取します。
葉酸は、Alimtaの投与される前の1週間のうち少なくとも5日間は摂取します。
さらに、最後のAlimta投与の21日後まで、毎日摂取します。
摂取量は臨床試験では350〜1000μg/日で、400 μg/日程度が推奨されています。

1日400μgの葉酸は処方薬では適当なものが無いので、市販の葉酸配合のサプリメントをしますする。ついでに、ビタミンやミネラルの補充を行なうのもよいので、葉酸を1日量400μg程度摂取できるようなマルチビタミン・ミネラルの利推奨されます。

ビタミンB12:Alimtaの投与を受ける前の週に1回、ビタミンB12を1000 μg筋肉します。(筋肉注射用のメチコバール 500 μgを2アンプル程度を使用します。 その後は、Alimtaを3回投与するたびに1回(1000 μg)のペースでビタミンB12のを行ないますする。(9週間に1回の注射)

葉酸葉酸とビタミンB12の補充は、Alimtaの骨髄や消化管のダヲハ常の抗がん剤治療に準じた血液検査を、投与前と8日後と15日後を目処に行ない、好中球数球数と血小板数の推移に応じて、投与量をします。好中球数が1500 /mm3以上、血小板数が10万 /mm3以上、クレアチニンクリアランスが45 ml/分
以上なければ、投与を行ないません。
投与後の最低値が、好中球数500 /mm3未満で血小板が5万 /mm3以上の場合は、次の投与量は75%に減らします。血小板の最低値が5万 /mm3以下になった場合は、次回の投与は50%に減らします。

【その他】

○ NSAIDs(COX-2阻害剤も含めて)は、アリムタを投与する前後2日間は服用を中止します。
腎臓の血流は腎臓のシクロオキシゲナーゼの活性で調節されているので、NSAIDsは一般に腎血流を減少させます。
Ibuprofen 400mg,1日4回服用の場合で、pemetrexedの排泄は20%減少します。

○ 中止や減量をすべき副作用の程度などの詳細は、Alimta使用説明書を参考にして下さい。
 

 

 
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