3.放射線照射や抗がん剤治療の効果を高めることもできる
Mさん(57歳、女性)は進行性の肺がんと診断されました。原発巣は右の上葉にありますが、肺門のリンパ節に転移があり、肝臓と骨にも転移が見つかりました。すでに手術はできない状態に広がっており、抗がん剤の全身投与と、骨転移に対して放射線治療が計画されました。抗がん剤や放射線治療の副作用を少なくしてしかも抗腫瘍効果を高めるために漢方治療などを希望して受診してきました。
漢方薬として、抗がん剤や放射線治療の副作用を軽減する効果が確かめられている十全大補湯に、血行を良くして組織修復を促進する駆お血薬(紅花・桃仁・牡丹皮)、放射線照射の効き目を高める作用を持つクルクミンを含む莪朮・欝金、血流を改善して放射線感受性を高める効果が報告されている地竜という生薬などを加えました。
がん細胞のアポトーシス抵抗性を低下させるためにCOX-2阻害剤のセレブレックスを処方し、抗がん剤や放射線治療の効果を高めるメラトニンも摂取してもらいました。予定の放射線治療と抗がん剤治療が行われましたが、副作用はほとんど経験せず、がんも著明に縮小しました。
クルクミンはがん細胞の放射線感受性を高めるという報告があります。がん細胞に酸化ストレスが加わるとアポトーシスという細胞死が起こりにくくなります。放射線照射はがん細胞に酸化ストレスとなり、アポトーシスに抵抗性となり、放射線の殺細胞効果に抵抗性になります。クルクミンはこの過程を阻害して放射線によるがん治療の効果を高めることが報告されています。クルクミンなどのセスキテルペン成分を多く含む莪朮や欝金を使うことは根拠があります。地竜はミミズの皮を乾燥したものですが、血液循環を良くする効果があり、放射線の効き目を高める効果も報告されています。
COX-2活性を阻害すると癌細胞は抗がん剤などで死にやすくなります。COX-2阻害剤のセレブレックスを併用すると抗がん剤治療の効果を高めることが多くの臨床試験で確認されています。
時差ぼけや不眠の改善に米国で人気のサプリメントであるメラトニンは免疫力や抗酸化力を高め、抗がん剤治療や放射線治療の効果を高めることが多く報告されています。
また、抗がん剤や放射線治療の時に、ビタミンCやEのような抗酸化性のビタミン剤が副作用を予防することが報告されています。抗酸化酵素の活性に必要なセレニウムにも同様な効果が報告されています。生薬は抗酸化物質の宝庫であり、抗酸化物質の多い生薬を追加することが、抗がん剤の副作用を軽減し、抗腫瘍効果を高めるポイントとなっています。